パナソニック Cの生成AI導入から1年、見えてきた企業利用の成果と課題…「年間18万時間削減」「専門分野の使い方」とは

AI要約

パナソニック コネクトは、社内向けAIアシスタントサービス「ConnectAI」の導入成果を発表。

18.6万時間の労働時間削減と情報漏洩ゼロを達成。

具体的な業務活用事例や利用状況も明らかに。

AIアシスタントは、部門を問わず広く活用され、特にグローバル業務で生産性向上。

AI活用スキルの向上や個々の業務に直結する利用が増加。

ConnectAIはプロンプトや評価機能を備え、平均20分程度の労働時間短縮を実現。

次なるステップとして品質管理情報など新たな利用領域を模索中。

パナソニック Cの生成AI導入から1年、見えてきた企業利用の成果と課題…「年間18万時間削減」「専門分野の使い方」とは

パナソニック コネクトは8月25日、ChatGPTをベースにした社内向けAIアシスタントサービス「ConnectAI」の導入成果を発表した。

2023年6月1日から2024年5月31日までの1年間で18.6万時間の労働時間を削減したと明らかにした。

情報漏洩などの事故はゼロだったとする一方、自社固有の情報の活用を進める中で見えてきた課題もあるという。

プロジェクトを主導するパナソニック コネクトの戦略企画部シニアマネージャー マーケティングIT統括担当の向野孔己氏に、生成AIの業務活用の実情と次なるステップについて聞いた。

パナソニック コネクトは、マイクロソフトがAzure上で提供するChatGPTサービスをベースに「ConnectAI」を自社開発。

2023年2月から、1万2400人の国内社員に提供している。2023年9月からはウェブサイトに掲載済みの情報など、自社固有の公開情報の利用を開始している。

さらに、2024年4月からは品質管理に関わる社外秘情報も利用できるようにし、AIが品質管理規定や過去の事例をもとに解答できる環境を整えている。

「ConnectAI」にはプロンプトの選択式テンプレートや、解答に対する評価など、独自の機能が数多く盛り込まれている。

どのくらいの時間短縮になったかを都度、5分、15分、30分、45分、1時間以上の5段階で報告する仕組みもある。

この評価機能により、これまでに約2000件の報告がされているが、5分が46%と最も多い一方で、1時間以上も12%ある。平均すると1回につき20分程度の短縮になっている。

12カ月間のAIの総利用回数は約140万回。1つの課題解決に平均2.5回ほどのやり取りがあるため、短縮された時間にこれを加味して集計した数字が18.6万時間になる。

利用回数は、導入直後の2023年3月から5月の3カ月間は約30万回だったが、2024年5月まで直近3カ月間は約42万回と、41%増えている。

「勤怠管理のように、必ず使わなければいけないものではないのに利用が増えているのは、皆が便利だと感じているということ。

最初は検索エンジン代わりのような使い方をする人が多かったが、最近は個々のAI活用スキルが向上し、業務に直結するような使い方をする社員が増えています」(向野氏)

以下に紹介するのは、1時間以上の短縮につながった業務活用の具体例(プロンプト)だ。

「物流業界の2030年までの課題をPEST分析を用いて整理してください」

「あなたは米国の〇〇の職員です。今のPCでの困りごとや、新しいPCに切り替えるとしたらどういった機能が必要か、ディスカッションしてください」

実際にアメリカで関係者を集めてリサーチするには時間もコストもかかるが、シミュレーションだけならAIでも可能だ。

「このように具体的な業務にも、かなり活用されている」と向野氏。意外なことに、部門による利用率の差もほぼなかった。

「営業よりも若干、R&Dやシステム開発部門が多い傾向はあるものの、利用率はほぼ人員構成比と同じ。法務などの部門でも、時間が大幅に削減できています」(向野氏)

例えば、アメリカで製品を販売するにあたって関連する法令はどれか、日本語で質問してあたりをつけられる。

最終的には英語の法令文を読んで調べるとしても、あらかじめあたりをつけられるだけで業務効率は大幅にアップする。

英語以外の言語でも同様のことが言えるため、「特にグローバル業務に携わる社員の生産性が上がっている」と話す。