Apple、生成AIでiPhone盛り返し 秋の需要増に期待

AI要約

米アップルがWWDC24で発表したApple Intelligenceは、AI技術を活用してiPhoneの買い替え需要を増やすことを目指している。

アナリストらは、Apple Intelligenceによる影響で2020年以来最大のiPhone買い替え需要が予測されている。

アップルとオープンAIの提携はグーグルに打撃を与える可能性があり、AI技術の競争が激化している。

 米アップルがこのほど開いた年次開発者会議「WWDC24」は、最新AI(人工知能)技術を独自生成AIシステム「Apple Intelligence」に組み込む以上の内容だったと指摘されている。それは、スマートフォン「iPhone」の販売を促進するものであり、AI競争の勢力図に変化をもたらすものでもあるという。

■ iPhone、2020年以来最大の買い替え需要か

 英ロイター通信によると、開発者会議で発表されたApple Intelligenceによって、iPhoneの買い替え需要が増加するとアナリストらは予測している。

 Apple Intelligenceに対応するiPhoneは現時点でA17 Proプロセッサーを搭載する機種のみである。これは「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」の2機種のみを意味する。つまり、「iPhone 15」やそれ以前の機種、「第3世代iPhone SE」では利用できない。2024年秋の発売が見込まれる「iPhone 16」シリーズでは一部機種が対応するとみられる。

 このことからアナリストは、2020年の「iPhone 12」シリーズ登場以来最大規模の買い替えサイクルが今秋訪れると予想している。

 米証券会社ウェドブッシュのアナリスト、ダニエル・アイブス氏の推計によると、過去4年間更新されていないiPhoneは約2億7000万台に上る。「Apple Intelligenceは多くのユーザーが待ち望んでいた『キラーアプリ』であり、15%以上の既存ユーザーが『iPhone16』に買い替えるだろう」と同氏は述べている。

■ 低成長続くiPhone、1~3月期10%減収

 アップル全売上高の約5割を占めるiPhoneは低成長が続いている。2024会計年度第2四半期(24年1~3月期)における、iPhoneの売上高は前年同期比10%減の459億6300万ドル(約7兆2000億円)で、3四半期ぶりの減収だった。23年10~12月期と23年7~9月期はプラス成長だったものの、それぞれ6%と3%と、小幅な伸びにとどまった。

 米ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナー、ジーン・マンスター氏は、米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」をアップルの基盤技術と統合したことを評価している。「これで誰でもが簡単にAIを使えるようになる」(マンスター氏)。

 一方で、一部のアナリストは懐疑的な見方を示している。ロイター通信によると、米フォレスターのアナリスト、ディパンジャン・チャタジー氏は「インテリジェントなアップルデバイスは、最近急減している売り上げの一部を食い止めることができるかもしれない。だが、新たなファン層を生み出すほどのものはない」と指摘する。

 米グローバルXのテジャス・デサイ氏は、「投資家はアップルに対してより包括的かつ野心的なAI戦略を求めている」と指摘した。

■ アップルとオープンAIの提携、グーグルに打撃か

 一方、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ) は「What the Apple-OpenAI Deal Means for Four Tech Titans(アップルとオープンAIの提携がテック4巨人に及ぼす影響)」と題する記事で、米グーグルにとって痛手となる提携だと指摘する。長年巨額を投じてインターネット検索のデフォルトツールとしてアップルと提携してきたグーグルにとって、好ましくない結果が生じる可能性があるとする。

 アップルは2003年以降、ウェブブラウザー「Safari」のデフォルト検索エンジンにGoogle検索を採用している。しかし、今回のアップルとオープンAIの契約により、アップルのAIアシスタント「Siri」は一部の質問において、ユーザーをChatGPTにリダイレクトするようになる。

 これにより、グーグルへのトラフィックが減少することになる。この提携はアップルとグーグルの関係性を悪化させる可能性があり、この2社を競合とする米マイクロソフトにとって有利に働く可能性があると、WSJは報じている。