「iPhoneにマイナンバーカード」、疑問点を取材してまとめてみた

AI要約

アップルがマイナンバーカードをiPhoneのウォレットに追加可能と発表。追加することで安心して利用できるとされているが、不安もある。

iPhoneの対応機種やメリット、セキュリティ面を検証。iPhoneをなくした場合のリスクや病院などでの利用に関する課題も明らかに。

プラスチックのマイナンバーカードとの関係、データの保護方法など、マイナンバーカードをiPhoneに追加することの利点と懸念点を解説。

「iPhoneにマイナンバーカード」、疑問点を取材してまとめてみた

マイナンバーカードをiPhoneのウォレットに追加して利用できるようになる、とアップルが発表しました。iPhoneを使って、役所や病院などで本人確認ができるようになります。ただ、アップルの発表内容だけでは細かな部分が分からず、もともと扱いに気を遣うマイナンバーカードだけに、「iPhoneに追加するとネット経由でハッカーにデータを盗まれないか?」「もしiPhoneをなくしたらどうなる?」と不安に感じている人も少なくないようです。

そこで、取材を通じて分かったことや疑問点をまとめてみました。結論としては、「プラスチックのマイナンバーカードを持ち歩く必要なく、より安心・安全にマイナンバーが活用できる」と感じました。

■どのiPhoneがマイナンバーカードの追加に対応している?

「iPhoneにマイナンバーカードの追加が始まる2025年春後半の時点で、最新のiOSに対応するiPhoneであれば利用できる」ことが取材を通じて分かりました。現行のバージョンはiOS 17なので、今年の秋にリリースされるとみられる次期iOS(iOS 18?)にアップデートできるiPhoneならばマイナンバーの追加に対応するとみられます。

現行のiOS 17は、iPhone 8やiPhone X以前の機種がアップデート対象外となったため、次期iOSではiPhone XSやiPhone XRなどのモデルが“落選候補”になりそう。iPhone 11以降の機種であれば対応できる可能性が高いと考えられます。

■iPhoneにマイナンバーカードを追加すると、どんなメリットがある?

クレジットカードや交通系ICカード、航空機のチケット、学生証などを登録してiPhone上で管理や利用ができる「ウォレット」に、マイナンバーカード内のICチップに記録されている情報をコピーし、プラスチックのマイナンバーカードと同様に使えるようになります。

ウォレットにコピーされるマイナンバーカードの情報は、公的個人認証に使われる「電子証明書」、カードに記載されている「氏名、住所、生年月日、性別、個人番号、本人の写真」など、必要最小限の情報のみ。税や年金、健康診断結果など、プライバシー性の高い情報はありません。

プラスチックのマイナンバーカードにはないメリットが、「カード面に記載されている氏名や住所、写真などの情報を見られずに済む」ということ。サイドボタンをダブルクリックしてFace IDによる認証を済ませない限りカードが表示されないので、手にしたマイナンバーカードを誰かに覗き見られて個人情報が漏れる心配はありません。

■iPhoneにマイナンバーカードの情報を登録したら、それまでのマイナンバーカードは使えなくなる?

iPhoneにマイナンバーカードの情報を登録するのは、マイナンバーカード内のデータを「コピー」するだけなので、それまで使っていたプラスチックのマイナンバーカードはこれまでと変わらずに使えます。

プラスチックのマイナンバーカードは、いわば“原本”として自宅に大切に保管しておき、ふだんはiPhoneをマイナンバーカードとして使えるようになるわけです。

■もしiPhoneをなくしたり盗まれた場合、誰かに悪用されちゃう?

前述の通り、ウォレットに保存したカードの情報にアクセスするためには、サイドボタンをダブルクリックしてFace IDかパスコードによる認証を済ませる必要があります。ご存じの通り、Face IDのプロテクトは強固なので、パスコードの漏洩にさえ気をつけていれば第三者による悪用の心配はありません。ちなみに、Face IDでの認証が済んでいない状態では、マイナンバーカードがiPhoneに登録されているかどうかも分からないため、その点も安心といえます。

■iPhoneはネットにつながっているだけに、マルウエアなどが使われてオンラインで盗まれないか?

マイナンバーカードの情報は、iPhone内のセキュア領域(Secure Enclave)に暗号化されて保存されます。セキュア領域は、クレジットカード情報やFace IDのデータなど、重要な個人データをハードウエアで暗号化して保存するストレージ。セキュア領域に保存したデータにアクセスできるのは認められた一部のアプリだけで、Face IDやTouch ID、パスコードでの認証を経る必要があります。

このセキュア領域は、アップルさえも参照できないほど強固な保護機能が備わっており、マルウエアなどのアプリがマイナンバーカードのデータを覗き見たり、インターネット経由でアクセスされる心配はありません。

うっかりiPhoneを紛失した場合でも、パスコードが漏れない限りはアクセスされる心配はありません。「探す」アプリから遠隔でデータを消去する機能もあるので安心できます。

■病院などの端末がiPhoneに対応するまで時間がかかる可能性も

現時点での課題として、病院などに設置されているマイナンバーカード対応受付機が、構造上「プラスチックのマイナンバーカードにしか対応していない」製品が多い、ということが挙げられます。カードを置く部分がiPhoneでのタッチには対応しておらず使えない、というわけです。

2025年春後半のiPhoneでの対応開始までに受付機の改良が進められるとみられますが、当初はプラスチックのマイナンバーカードも持ち歩かなければならない状況になるかもしれません。