シリコン膜からの熱放射倍増…東大、半導体デバイスの排熱問題解決へ

AI要約

東京大学の立川冴子大学院生らの研究チームが、シリコン膜の表面をわずかに酸化させるだけで熱放射を倍増させる方法を開発した。

これまでの常識を覆し、表面フォノンポラリトンを活用することで熱放射を効率的に増やすことが可能であることが示された。

この技術は、半導体デバイスの熱問題の解決に貢献するだけでなく、熱管理や放熱など様々な分野に応用が期待される。

東京大学の立川冴子大学院生(研究当時、現産業技術総合研究所研究員)、同大生産技術研究所の野村政宏教授らの研究グループは、シリコン膜の表面をわずかに酸化させるだけで「プランクの熱放射則」で決まるとされていた熱放射を倍増させた。半導体デバイスの排熱問題の解決などに役立つと期待される。

研究グループは、シリコン膜の表面を酸化させ、酸化膜界面の格子振動により、表面フォノンポラリトンという光と格子振動の連成波を熱励起した。その結果、シリコン膜からの熱放射が増えた。

誘電体膜を数十ナノメートル(ナノは10億分の1)まで薄くしないとプランクの熱放射則を上回る熱輻射(ふくしゃ)は得られないという定説を覆す成果。適切な半導体構造を設計して表面フォノンポラリトンを利用すれば、空間への放熱をより効率的に行うことができることを示す。

高性能な半導体デバイスは局所的な発熱による性能や信頼性の低下が課題だ。電子機器の熱管理や輻射ヒーター、宇宙空間での放熱などへの応用が見込める。科学技術振興機構(JST)などの支援を受け、フランス国立科学研究センターと共同で研究した。