【ネットは見なければ平和】大ヒットエッセイ『九十歳。何がめでたい』が映画化、佐藤愛子さんのかっこよすぎる生き方と考え方

AI要約

映画『九十歳。何がめでたい』の主題歌『チーズ』を歌う木村カエラが、佐藤愛子先生のパンク精神に感銘を受け、その生き方からインスピレーションを得て曲を制作する。佐藤愛子先生は100歳を超える若さと勇気で知られ、自身の哲学や生き方について率直に語る。

『九十歳。何がめでたい』の著者である佐藤愛子先生は、人生について深く考え、眞剣でありながらもふざける一面も持つ。彼女の生き方や考え方は、“暴れ猪”と称されるパンク精神を感じさせる。

佐藤愛子先生は翌年にも続編『九十八歳』を出版し、ますます注目を集めるが、本人は控えめな態度を見せる。彼女の哲学と生き方には、物事を深く考え抜く眼差しと軽やかな風に乗じる姿勢が共存している。

【ネットは見なければ平和】大ヒットエッセイ『九十歳。何がめでたい』が映画化、佐藤愛子さんのかっこよすぎる生き方と考え方

 映画『九十歳。何がめでたい』の主題歌『チーズ』を歌う木村カエラ。その発表に際した彼女のコメントに多くの人が膝を打った。曰く、「とにかく先生にPUNK精神を感じてしまうのです。佐藤愛子先生がかっこよすぎる」。

 愛子センセイは《人生いかに生きるか、なんて考えたこともない。その場その場でただ突進するのみ》(『増補版 九十歳。何がめでたい』より)で御年100歳。映画にも描かれているかっこいい生き方、考え方を、映画原作本の2冊から詳らかにする。

「人生で最も大切なことは何でしょうか」

 雑誌やテレビ、新聞でもよく見る、ありふれた質問だろう。「さすが先生!」と膝を打ちたくなるようなひと言を、ペンを片手にじーっと待つインタビュアーに佐藤さんは密かに思う。

《簡単にいうな、と怒りたくなる。私はいつもふざけているようだけれど、芯のところでは眞面目で眞剣な人間である。ふざける時も眞剣にふざけているのだ。(中略)人生で最も大切なことは?と訊かれて、「愛です」「感謝です」などとすぐに答えるような芸当は私には出来ない。眞剣に、深く考えないから簡単にそういうことがいえるのだろう》(『増補版 九十歳。何がめでたい』〈以下、『九十歳』〉「私なりの苦労」より)

 木村カエラは佐藤さんにパンク精神を感じ、「その真っ直ぐで突進していく気持ちよさから、軽快でかっこいい曲を作りたい」と思い、『チーズ』の歌詞が生まれたという。佐藤さんは先のエッセイでこう続けている。

《人生いかに生きるか、なんて考えたこともない。その場その場でただ突進するのみだった。/そんな私がどうして「人生で最も大切なことは」などとしたり顔でいえるだろう》

 このたび発売された『増補版 九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(以下、『九十八歳』)と『九十歳』には、自らを「暴れ猪」と呼ぶ佐藤さんの生き方、考え方が随所に綴られている。

 断筆宣言を覆して本誌『女性セブン』で連載を始めた「九十歳。何がめでたい」の単行本を2016年に発売すると、たちまちベストセラーに。なんと翌2017年の年間ベストセラーランキング総合第1位になり、発売から8年目の今年、まさかの映画化までされるわけだが、佐藤さんはどこ吹く風だ。『九十八歳』に収録した2021年のインタビューでこんなふうに答えている。

《「どうって、特別な感想というものは別にないわね。ああ、そうですか、っていう……。あえて言うなら、『なんで?』でしょうか」》(「書くことが私の生活のすべてだった」より)

 直木賞作家で現在は日本大学の理事長も務める林真理子さんとの対談でも、『九十歳。何がめでたい』が100万部を超えるベストセラーになったことについて《不思議ですね。何が面白いんだろう(笑)》と語り、そして対談はこんなふうに続いていく。

《林:先生じゃなきゃ書けないようなことが満載で、「ガタガタ言うな」とか「こんなことにこだわるほうがおかしい」とか。

佐藤:「うるせえな」とか(笑)。人は「ズバズバ言ってる」と思うかもしれないけど、私はこれがふつうなのね。

林:先生はネットの炎上なんかコワくないですよね。

佐藤:ネットっていうの、見たことないんです。見なければ、それで平和です。

林:ああそうか。そういう物書きがいちばん強いですよ》(『九十八歳』林真理子×佐藤愛子「すべて束の間の戯れ言」より、以下同)