親和性高し? 終わらない夏…「夏×タイムリープ」の組み合わせが最強にエモい件

AI要約

『ひぐらしのなく頃に』は、夏の郷愁とループする恐怖が絶妙に融合した作品。

『サマータイムレンダ』は、海の島での夏の高揚感とタイムリープの緊張感が交錯する物語。

夏の情景とタイムリープが織り成す切なさやノスタルジーが描かれた2作品。

親和性高し? 終わらない夏…「夏×タイムリープ」の組み合わせが最強にエモい件

 降りそそぐ蝉しぐれ、青い空にそびえる入道雲、夕立の匂い、静かにはぜる線香花火……夏の情景はどこか儚く、ノスタルジーを感じさせるものがある。それは、まるで果てしなく続くかのように思えた夏休みや、時間の流れを忘れさせるほどの特別な思い出のせいかもしれない。

 そして、SF作品で描かれる「タイムリープ」というテーマは、こうした夏の情緒をさらに強調してくれるように思う。今回は「夏×タイムリープ」の組み合わせを持つ『ひぐらしのなく頃に』『サマータイムレンダ』『STEINS;GATE』3作品を通じて、その魅力について考察する。

 テレビアニメ『ひぐらしのなく頃に』シリーズは、同人サークル「07th Expansion」の同名ゲームを原作として製作されたものだ。架空の村落「雛見沢村」での昭和58年の夏を舞台に、古くから村に伝わる行事「綿流し」をめぐって繰り返される惨劇と謎が描かれる。

 白川郷をモデルとした雛見沢村の描写は、日本の夏ならではの青々とした田園風景と黄昏時に響くひぐらしの鳴き声で、観る者の郷愁をかきたてる。そこで繰り広げられる主人公グループの日常は、ほのぼのとした若者の夏の光景そのものだ。

 一方で、彼らは毎回猟奇的な殺され方をし、その後また何事もなかったかのように同じ年の夏を繰り返す。そのたびに見えてくるのは、閉鎖的な村にありがちな悪しき風習や、住民同士の軋轢、生々しい家庭事情、不気味な風土病といった、日常に潜む陰鬱な背景だ。

 繰り返されるたびに少しずつ非日常に侵されていく日常と、変わらずあり続ける夏の原風景。これらが延々と繰り返されることで、奇妙な気怠さと不気味なループ感を味わえるのが、本作の魅力の一つだろう。

 ノスタルジックな山の夏とは対照的に、快活な海の夏を描いているのが『サマータイムレンダ』だ。田中靖規氏によるSFサスペンス漫画を原作に、2022年にテレビアニメ化もされた本作は、和歌山市にある架空の離島「日都ヶ島」を舞台にしている。

 生まれ育った島を出て上京した主人公・網代慎平は、家族同然に育った幼馴染・小舟潮の訃報を受け、2年ぶりに帰郷する。そこで古くから島に伝わる「影」の伝説に巻き込まれ、自身の死を契機にタイムリープを繰り返しながら、伝説の謎解きと影との戦いに挑むことになる。

 特徴的なのは、毎回ループの開始時点が後ろにずれていくことだ。影による惨劇が起きる夏祭りの日をリミットに、慎平は時間とのせめぎ合いのなかで幾度もの死を体験し、より良い結末を模索する。このとき、死んだはずの潮も慎平のバディとして一緒に時間をさかのぼること、そして事情を知って共に戦う仲間たちがいることは心強い。

 夏の離島、島の伝説、不気味な敵、仲間と共に挑む戦い……これらの要素は、夏のイベントをぎゅっと詰め込んだような高揚感を与える。一方で、永遠に繰り返すようでいてタイムリミットがじわじわと迫ってくる様子は、どこか夏の終わりの切なさとリンクする。

 また、物語の出発点はあくまで潮の死である。出て行ったはずの故郷に久々に帰る理由が、そこに残した大切な人の葬儀なのだ。その言いようのない寂しさを、抜けるように青い空と海が空々しく引き立てる。夏の高揚感に潜むひっそりとした感情が、たまらなく切ない。