朝ドラ“久保田先輩”小林涼子、農業との二足のわらじ「全部、俳優の仕事の糧になる」

AI要約

俳優・小林涼子が農業会社を代表し、障がい者を雇用する事業に取り組む理由を語る。

小林が農業に携わるきっかけや農福連携技術支援者としての活動について紹介。

現在、小林が率いる企業では、女性スタッフが多く子育て世代も含まれている。

朝ドラ“久保田先輩”小林涼子、農業との二足のわらじ「全部、俳優の仕事の糧になる」

 俳優・小林涼子(34)はNHK連続テレビ小説『虎に翼』(月~土曜午前8時)で、日本初の女性弁護士・久保田聡子を演じている。主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)が通った大学の先輩でもあり、可憐な見た目と凛々しい口調で話題になった。そんな小林は、農業会社の代表取締役でもある。小林へのインタビュー企画「後編」では、彼女が農業を始めたきっかけ、取り組みへの思い、未来像など語っている。(取材・文=よもつ)

 子役、雑誌モデル、俳優業と、幼い頃から芸能の世界に身を置く小林は、2014年から農業に携わるようになった。

「駆け抜けた10代が終わり、20代になった私は少し疲れていました。そんな時に家族の勧めから、新潟の棚田で稲作のお手伝いをしました。それがきっかけでした。新潟の人たちがすごく優しくて、空気も澄んで、ご飯もおいしくて、固まっていた心が『ふわっ』と溶けていくのを感じました。東京とは違う豊かさに触れる中で、価値観が変わり、農業がすごく好きになりました。その後も手伝いを続けて、これが当たり前に続くと思っていた矢先、家族の体調不良がきっかけに継続が困難になったのです。そこで食料問題や高齢化が進む農業を自分事として考えるようになり、農業が私を癒やしてくれたように私も農業に対して『何かできないか』と思って起業しました」

 設立した株式会社AGRIKOでは、ビルの屋上で「アクアポニックス」(養殖×水耕栽培のシステムで行う循環型の農業)のプロジェクトを展開。また、後継者不足の問題を抱える農業と雇用問題を抱える福祉の連携を目指す「農福連携」を軸に、企業が障がい者を雇用する際のマッチングや雇用後の障がい者のサポートも行っている。

「俳優業との両立、農業初心者であることを踏まえて自分に何ができるか考えていた時、農福連携技術支援者という資格を知りました。まずは農林水産省の講習に参加し、資格を取りました。ただ、いざ身近な世田谷で農業をするにも農地がない。一方で『バリアフリーな農業をする』という思いはずっとあったので、この事業を始めました」

「農福連携技術支援者」とは、具体的にどのような立場でどんな取り組みをするのか。

「企業においても同様に、社会の中で障がい者の方の特性を生かした働き方を提案しています。農福連携技術支援者は、農業者、障がい者、福祉事業者の間の通訳のような役割です。農業者が求めることを障がい者の方がどうしたらできるか、その方法を一緒に考えます」

 現在、同社のサステナビリティ事業スタッフは多くが女性で、その8割が子育て世代だ。

「皆さんがマルチタスクで、障がい者の方の不安や体調の変化にもすぐ気づいてくれる。そうしたスタッフのお陰で日々も順調に回っています」

 障がい者へのサポートは、かつて自身がしてもらったことと根本は同じだという。

「私も最初はできないことが多かったけど、農家の方々ができることを一緒に探してくれたお陰で農業が楽しくなりました。それと同じで、障がい者の方に対しても『みんなで得意なことを分担する』という感覚です。ちょうど昨年から、すごく絵が上手い障がい者の方の作品を『ラベルやコースターなどにできないか』と思い、パラアート事業を始めました。現在、Petrichor Bakery and Cafe(東京・新宿区)やBAKERY RESTAURANT C(東京・文京区)のコースターや紙袋などに採用されています」