東京・菊川の映画館「Stranger」27歳 新社長の挑戦「ミニシアターに行ったことがない人もいてギャップに驚くことも」

AI要約

27歳の更谷伽奈子さんが新たに社長として就任した映画館「Stranger」。前代表のセレクションセンスを引き継ぎつつ、新たな取り組みでファンを増やしている。

更谷さんは映画をつくる側から、映画を世に広める“出口”を作る側へとキャリアを積んできた。Strangerでの仕事は彼女が一番やりたい仕事であり、映画館での特別な体験を提供することを目指している。

更谷さんは就任後、売り上げや動員数を伸ばす一方、イベントの拡充や番組編成の幅広げ、地域との連携など様々な取り組みを行っており、地元のファンからも好評を得ている。

東京・菊川の映画館「Stranger」27歳 新社長の挑戦「ミニシアターに行ったことがない人もいてギャップに驚くことも」

 東京・墨田区菊川の映画館「Stranger(ストレンジャー)」。2022年にクラウドファンディングを中心に設立され、シネフィル(映画通)たちをうならせる上映ラインアップや特集企画でファンを獲得してきたが今年2月、映画配給ナカチカピクチャーズなどを運営するナカチカ株式会社に事業譲渡。新体制となったStrangerを率いるのは27歳の社長・更谷伽奈子さんだ。都内のミニシアターが少しずつ姿を消していく厳しい状況の中、挑戦を続ける更谷さんの思いとは。

「プレッシャーは大きかったですね」と社長就任を振り返る更谷さん。

「Strangerのことは私も前から客として知っていて。前代表によるセレクションのセンスがとても良くて、これを今見れるんだとか次はどんな特集をするんだろうと、映画通から楽しみにされている映画館というイメージがありました。それを踏襲したいと思っても私にはまだセンスも経験も足りませんから、これまでのお客さんに、そのラインアップは違うよと言われたらどうしようと、最初のうちは本当に怖かったです」

 もともとナカチカの配給部門で劇場を担当してきたが今年、ミニシアター事業のためナカチカの子会社として新たに設立されたストレンジャー株式会社の取締役社長に抜擢。

「任されたときは驚きましたし不安もありましたけど…やらないという選択肢はありませんでした。もともと学生時代から、学校や公民館などいわゆる非劇場での上映をサポートする会社の営業を担当していて、当時は作品を作る側にも興味があったんですが、しだいに映画がつくられた後、世の中に届けるという“出口”を作る側に行きたいと思うようになったんです。映画そのものも好きなんですけど、子供のころから映画館で映画を見るという体験が好きで。Strangerでの仕事はまさに、作品が世の中に出ていく“出口”を作り、特別な映画館体験を提供すること。自分がずっとやりたいと思っていた仕事だったんです」

 ナカチカでの劇場担当と兼務しながら経営困難な状態でのバトンパスだったが、就任後、第一クォーターの売り上げは約120%増、動員は前年比110%まで伸びている。

「任せていただいたからには、やれることを片っ端からやろう、と(笑)。まだやっていなかったけどやってみたらどうなるんだろうということはまず一度やってみるようにしています。例えば、イベントを増やした他にも、通常の上映中にカフェスペースで短編映画の上映会を行ったりもしています。その短編映画の監督やキャストが参加するティーチインも行うんですが、なかなか上映機会のない短編映画に触れていただきながら、作り手と一緒にお茶しながら語り合うという距離感を双方、楽しんでいただいているようで、質問のやり取りも熱いんです。けっこうカフェの売り上げにもつながりますし(笑)。

 他にも、番組編成のジャンルを広げたり上映機会を増やしています。チケット販売のサイクルも、2週間限定上映の作品がもう少し需要がありそうだと見たら延長するなど、より柔軟に調整しています。

 1日の上映回数も増やしました。これまで10時スタートだったんですが今は早ければ8時台から上映1回目が始まるときもあります。朝早い回って、けっこう地元の方が来てくださるんです。なので、作品の選定とともに、より地域との連動を意識するようにしています。『PERFECT DAYS』(監督:ヴィム・ヴェンダース、主演:役所広司)上映時は、主人公がこの付近に住んでいるという設定で、ロケ地の1つでもある〈電気湯〉さんとのコラボ企画を行ったところ、お互いのお客さんが行き来して楽しんでくれたようです。

 このエリアはクラフト系やアート系のクリエイターさんが多いのでそういった方々とのコラボだったり、人気のカフェが多い清澄白河からも近いので、近隣のカフェとコラボしたりと、このエリアの魅力を生かせる企画をいろいろ考えています」