【今月見るべき新作映画】話題の新感覚スリラー『ロイヤルホテル』

AI要約

映画プロデューサーを目指す女性が抑圧社会を告発する『アシスタント』で注目を集めた監督キティ・グリーンと主演ジュリー・ガーナーが再びタッグを組み、新作『ロイヤルホテル』を発表。

親友がオーストラリア旅行中に困窮し、バーテンダーの仕事を斡旋されるストーリーは、砂漠に建つ荒廃したパブを舞台に展開する。

映画は、不快感と恐怖を巧みに描きながら、日常との共鳴を生む強烈なメッセージを届ける。

【今月見るべき新作映画】話題の新感覚スリラー『ロイヤルホテル』

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 映画プロデューサーを目指し、念願のエンターテイメント企業に就職した女性を主人公に据え、抑圧社会を告発した『アシスタント』(2019年)。この映画で注目を浴びた監督キティ・グリーンと主演ジュリー・ガーナーが新作『ロイヤルホテル』で再びタッグを組んで観客を震撼させる。

 ガーナーが演じるのは、親友のリブ(ジェシカ・ヘンウィック)とオーストラリア旅行にやって来たバックパッカーのハンナ。旅の途中で所持金がなくなった二人は、ワーキングホリデーの事務所に駆け込んで、バーテンダーの仕事を斡旋される。

 彼女たちがはるばるやって来たのは「ロイヤルホテル」とは名ばかりの、砂漠に建つうらぶれたパブだった。そこで二人を待っていたのは、粗暴な飲んだくれのオーナー(『マトリックス』のエージェント・スミスことヒューゴ・ウィーヴィング)と、彼女たちを“不機嫌なメス犬”と呼ぶ男たち。

 2016年にドキュメンタリーとして発表された作品をもとに、注目の女性監督キティ・グリーン監督が新たな視点やメッセージを込めて映画化した。

 太陽を浴びながら田舎町でのんびり働くことを思い描いていた二人の当ては大きく外れたが、それでもリブはなんとかやり過ごして報酬を得ようという。一方のハンナは下卑た笑いやボディタッチ、理不尽な叱責に神経をすり減らし、追いつめられてゆく。

 そんじょそこらのホラー映画よりよっぽど怖い状況に身震いが止まない。しかも映画は、この不快感と恐怖の舞台はオーストラリアの砂漠に限らず、我々の日常と地続きであると語りかける。

【写真】生真面目はハンナ(ジュリー・ガーナー・左)と、楽観的なリブ(ジェシカ・ヘンウィック・右)。親友であるはずの二人の気持ちが、みるみるうちに離れてゆくその先に待ち構えるものは……

『ロイヤルホテル』

7月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

BY REIKO KUBO