心臓の中の腫瘍…「粘液腫」の危険性とは?~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.23~

AI要約

『ブラックペアン シーズン2』は二宮和也主演のドラマで、医学監修は山岸俊介氏が務める。前作と同様、人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」が注目を集める。

今回の解説では、粘液腫(ねんえきしゅ)について詳しく説明。心臓内に発生する良性の腫瘍であり、手術が必要な場合もある。

粘液腫が左房にできると、血流障害や心臓の弁にはまり込む可能性があり、重篤な状態に至ることもある。

心臓の中の腫瘍…「粘液腫」の危険性とは?~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.23~

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された6話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

■粘液腫(ねんえきしゅ)

粘液腫とはあまり聞いたことがない病気だと思います。簡単に言うと心臓の中にできるできもの(腫瘍)です。ほとんどが良性腫瘍と言われます。

良性腫瘍ということは、取ってしまえば再発もしませんし、転移もしません。うずらの卵くらいの大きさからダチョウの卵まではきませんが、かなり大きいものまであるようです。少し柔らかめのゼリーのような感触です。良性腫瘍なので手術で摘出してしまえば良いのですが、問題となるのは心臓の中にあることによる血流障害と、心臓の中から飛び出してどこかの血管に詰まってしまう塞栓症です。

渡海先生のお母さんはまさにこの血流障害により失神してレストランで倒れてしまいました。

この粘液腫は左房(左心房)という部屋にできやすいと言われています。血液は肺から肺静脈を通って左房に入って、僧帽弁という扉を通って、左心室に流れ、左心室から大動脈弁を通って全身に送られます。ここで左房に大きなできもの(粘液腫)があると、最悪の場合、僧帽弁にはまり込むことがあります。これを嵌頓(かんとん)すると言います。そうなると大変です。血液が左房から左心室に全く流れなくなりますので、全身にも血液が流れなくなります。本当に運が悪いとそのままお亡くなりになってしまうケースもあります。

渡海先生のお母さんは僧帽弁に粘液腫が一瞬はまり込んで、血液が全身に流れなくなり、頭への血流がなくなり失神して倒れてしまったものと思われます。幸い、はまり込んですぐに外れたので良かったのですが、はまり込んだままだったらと思うとぞっとします。