縫合と糸結び…外科医にとって重要な技術~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.22~

AI要約

二宮和也主演の『ブラックペアン シーズン2』での医学的解説。救急外来での手術について詳細に解説される。

左胸に鉄パイプが突き刺さり、肺動脈と左心耳が傷ついた患者への対応について、手術のポイントや修復の難しさが語られる。

演者たちが縫合大会を行い、外科医になれる素質を持っていることが感動的に描かれる。

縫合と糸結び…外科医にとって重要な技術~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.22~

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された6話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

■救急外来での手術

崩落事故で沢山の患者さんが運ばれるシーン。救急医だけでは手が足りずに心臓外科医が借り出されます。

世良先生と渡海先生が対応したのは、左胸に鉄パイプが突き刺さり、肺動脈と左心耳が傷ついているという患者さんです。一応このような状況は救急医療の文献で報告があり、ありうる状況のようです。こういう時は鉄パイプは抜かずに、完璧に止血できる状況、つまり鉄パイプが肺動脈と左心耳に突き刺さっている部分を露出できてから抜きにかかるのが鉄則です。

左心耳とは左心房の一部分で、その名の通り耳のような形をしている部分です。左の肺動脈の下にありますので、そのあたりに鉄パイプが突き刺さると一緒に傷つく事があります。

肺動脈も左心耳も非常に脆く、修復するのはかなりのテクニックが必要です。少し糸を引っ張りすぎたりすると、裂けていってしまいます。良く見ると左心耳はサテンスキーという曲がった鉗子(かんし:組織を挟むための道具)で挟んであります。

渡海先生は肺動脈の修復が終わった後、世良先生に左心耳の縫合を任せます。関川先生が言ったようにさすがに左心耳の縫合を研修医にさせる事はありませんが、渡海先生の手技を間近で見て、努力を惜しまず、ティッシュペーパーを縫う練習を繰り返している世良先生には出来ると判断したのでしょう。世良先生は手際よく左心耳を縫合していきます。

現場レポートにもありましたが、渡海先生と世良先生と猫田さんで撮影の合間に縫合大会をやって、もう何回も言ってて飽きてしまったかもしれませんが、この人たち器用だなぁとホントに感動しました。医者以外の人が、持針器とセッシで縫合するという状況を見た事がないし、この先もそうそうないとは思いますし、演者さんたちもそうそうない経験だと思うのですが、皆さん外科医になれる人材です。