ホン・サンス組の台本は当日朝「計画立たないからこそ演技は自由」クォン・ヘヒョ 「WALK UP」

AI要約

クォン・ヘヒョはホン・サンス監督の新作「WALK UP」で映画監督を演じており、特異な撮影方法に楽しみながら取り組んでいる。

ホン監督の現場では完成台本を持たず、当日の朝にその日の撮影分だけが渡されるため、俳優はその瞬間に集中して演技することが求められる。

「WALK UP」は4階建てのアパートを舞台に、ビョンスが異なる女性との関係を描いており、俳優たちは自然な演技を披露している。

ホン・サンス組の台本は当日朝「計画立たないからこそ演技は自由」クォン・ヘヒョ 「WALK UP」

ホン・サンス監督作品の常連、クォン・ヘヒョ。新作「WALK UP」でも、他のホン・サンス作品で何度も演じた映画監督にふんしている。物語の全体像を知らされない独特の撮影を「演技のワナから自由になれる」と楽しみながら、モテモテ映画監督には「ホン監督も、私も投影されているのでは」。演技について、地道に取り組む社会活動について聞いた。

ホン監督とは、「3人のアンヌ」(2012年)以来の付き合い。俳優は完成台本を持たず、撮影当日の朝に、その日の撮影分だけが渡される。途中参加の俳優には、つながりも教えないという。

「その日に撮った分の台本は、全部持ち帰ってしまう。だからそのシーンに出演していない俳優さんは、前の日に何を撮ったか、全く分からない。私も、前の日には娘の父親として演技をしていたのに、次の日の台本には他の女性と暮らしている男になっている。そうすると、父親だった時のことは忘れて、その瞬間だけに集中することになります」

俳優として、戸惑いませんか。「完全に反対ですね。というのも、俳優は本能的に、自分が演じるキャラクターについて悩みます。こういう人だろうと決めて、事前に計画を立てて演じる。でも実はそれが、演技のワナです。私たちは一定ではない。外で仕事している時と家では違うし、お互いのことを分かっているわけじゃない。撮影している間は、次に何が起きるか知っているのに知らないふりをしているにすぎないんです」

「ところがホン監督の現場では、当日の朝まで何をするのか分からないので、悩みようがない。演技の慣習やテクニックが必要なくなるんです。相手のセリフを一生懸命聞いて、誠心誠意反応し、心を込めてセリフを伝える。楽しくて、自由になれる。もし失敗しても、監督のせいだと思えるところもありますしね。そう考えると、ホン監督の作品は最も真実に近いのかもしれません」

「WALK UP」は4階建てのアパートを舞台に、クォンが演じる映画監督ビョンスが、1階ごとに違う女性と付き合っている様子を4章仕立てで描く。物語はつながっているようないないような、ビョンスの造形もちょっとずつ異なる。俳優たちは実に自然だ。1シーン1カットの場面が多く、ビョンスと2人の女性がワインを飲みながらおしゃべりをする場面は、17分もの長回し。その間もなめらかに会話が続き、穏やかに場面は過ぎる。

しかしそこに至るまでは大変だ。「短い時間でセリフを完璧に覚えて、他の俳優さんたちとアンサンブルしなければならない。時間をかけて念入りにリハーサルをします。監督も交えて細かいニュアンスやリズムなどを確かめて、本番でもテークを重ねながら修正していきます。アドリブはありません。カットを分けて撮る作品よりも、多くの時間が必要なんですよ」