BiSHの解散から1年。モモコグミカンパニーがエッセーや小説を書く際に考えていること

AI要約

元BiSHメンバーであり作家のモモコグミカンパニーが、喫茶店のマスターへの取材連載をもとにした短編小説集『コーヒーと失恋話』を発表した。

取材を通じて喫茶店経営者の背後にある思いや、人間関係について考えるきっかけとなったエピソードが収められている。

特に、高齢の喫茶店経営者から得た人との関わり方や学びの大切さについてのエピソードは印象的である。

BiSHの解散から1年。モモコグミカンパニーがエッセーや小説を書く際に考えていること

楽器を持たないパンクバンド、BiSHが解散して1年。元メンバーのモモコグミカンパニーさんはBiSH時代、音楽活動と並行して執筆活動も精力的に行ない、今年5月には6作品目となる『コーヒーと失恋話』を発売。

自身のホームページに掲載していた喫茶店のマスターへのインタビュー連載に、書き下ろした10編の短編小説を加えた作品だ。モモコさんがアポイント取りから取材までを自ら行なった渾身(こんしん)の一作。その短編小説集に込めた思いに迫る。

* * *

――どういった気持ちでこの作品を書き始めることにしたんでしょうか?

モモコグミカンパニー(以下、モモコ) 喫茶店のマスターを見ていて、「何を考えているんだろう」っていう疑問から始まったんです。

昔から純喫茶は好きでよく行っていたんですが、私自身人見知りで、マスターと話したりできなくて。

でもずっと、マスターがどんな気持ちで喫茶店を経営しているのかが気になっていて、それを知るためには取材をするしかないと思い、自分のホームページで喫茶店のマスターに話を聞く連載を始めたのがきっかけです。

最初にお伺いしたのは、その疑問を持つきっかけにもなった高円寺の「アール座読書館」っていう私語厳禁の喫茶店。マスターもお客さんも何もしゃべらないんです。

――今までの活動のおかげで、取材のアドバンテージがあったのでは?

モモコ いや、アポイントを取るのにはかなり苦労しました。名前も「モモコグミカンパニー」っていう特殊な名前なので警戒する方もいらっしゃって(笑)。

取材許可を取る中で、どうやって信用を得たらいいんだろうって考えたり、誤解を解いたりしたので、「自分はこういう者で」って説明する力もつけられたかなと思います。

――取材する店はあらかじめ決めていたんでしょうか?

モモコ いえ、最初のお店以外は、取材したマスターにお気に入りの喫茶店を教えてもらってつなげていきました。そのほうが、まだ知らないすてきな喫茶店との出会いがあるかなって思ったんです。

そのせいで、最初は中央線沿線のお店が多いのに、途中から山登りが趣味のマスターに出会って、結果的に長野県とか函館(北海道)とかに飛ぶことになりました(笑)。

――特に印象に残っている取材はありますか?

モモコ 3店舗目の「邪宗門(じゃしゅうもん)」という喫茶店の当時91歳のおばあちゃんにお話を聞きに行ったときです。

当時、コロナ禍ということもあって、私もファンの方から、「人との関わり方がわかりません」とか「大学に入ったのにリモートばっかりで誰ともしゃべれなくて」と相談を受けることが多かったので、その人たちを代表して、人との関わり方を聞きに行こうと。

私も人と関わるのが得意なほうではないので、「コミュニケーションってどうしたらうまくいきますかね?」と聞いたら、「人と話してないからそう思うだけだよ」って言われたんです。

「本気で人と関わっていたら、悩む暇もなくなるから、どんどん関わっていけばいい」とおっしゃっていて。

それから、もう90歳を超えているのに、「自分も勉強していないと周りにいい人も現れないから、勉強しなきゃと日々思ってるの」とおっしゃっていて、それは自分も頑張ろうと、ハッとさせられた言葉でした。

――そうして取材した後、インタビューからエッセンスを拾った短編小説をそれぞれ書いています。特にお気に入りの短編小説はありますか?

モモコ 好きだと言ってくれる人が多いのは、第6話の「ブラックてるてる坊主」ですかね。

この話の元になった喫茶店が夫婦で営まれているお店で。普段、夕飯は一緒に食べないのに、週末にはふたりで居酒屋に行くというおふたりの絶妙な距離感が面白くて、それを姉妹の話に落とし込めないかなと思って書きました。

それと、幼少期の私自身もなんとなく反映されているなって思っていて。周りが白いてるてる坊主を作る中、ブラックてるてる坊主を作って運動会を中止にさせようっていう、おまじないを強く信じる女の子が主人公なんですけど、私もそういう子供だったなあって。

例えば、家を出る前にまばたきを10回してからじゃないと絶対学校行けないとか、そういう自分なりのルールがめちゃめちゃあったんですよ(笑)。だから愛着の湧く方が多いのかなと思います。