「こんな仕事、僕の能力の無駄遣いです」…上司から指示を断る新入社員の「頭の中」

AI要約

新入社員が自己評価を過大にして仕事を拒否する事例が紹介されています。能力を過信し、質問をしないことで重大なミスを犯す若者も存在し、周囲に迷惑をかけています。

このようなタイプは、自己愛が強く、自己評価が高い幻想にとらわれており、自らの責任を認めない傾向にあります。職場全体に悪影響を及ぼす職場を腐らせる人として描かれています。

著者は、職場の人間関係に関する悩みが最も多いと指摘し、職場を腐らせる人が存在すると腐敗が広がっていく危険性を警告しています。

「こんな仕事、僕の能力の無駄遣いです」…上司から指示を断る新入社員の「頭の中」

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

スキルアップするにしても、まずは仕事を覚える必要があるはずだが、それさえも拒否するような新入社員がいるという。製造業のある会社では、新入社員の男性が、上司から指示された仕事であっても、「教えてもらっていないので、できません」「これは横で見ていただけなので、できません」などと断るそうだ。

仕方がないので、簡単な事務作業をするよう上司が指示すると「こんな仕事を僕にさせるなんて、僕の能力の無駄遣いです。もっと僕の能力を発揮できる仕事をさせてください」と要求する。そのため、どんな仕事をさせればいいのか会社では苦慮しているらしい。

この男性は、自分自身の能力を過大評価している可能性が高い。だが、実際には、自分で思っているほど仕事ができるわけではない。だからこそ、いろいろ理由をつけて仕事を断るのではないか。こういうタイプは、強い自己愛ゆえに自分は何でもできるという幻想的万能感を抱いていることが多い。仕事ができないという現実に直面すれば自己愛が傷つきかねないが、そうなるのは嫌なので、前もって断るわけだ。

このように幻想的万能感を抱いているせいで周囲に迷惑をかける若者はどこにでもいる。たとえば、ある金融機関では、知ったかぶりをして、質問しないため、重大なミスをする男性の新入社員に上司が手を焼いている。この新入社員は、一流大学を優秀な成績で卒業しており、仕事にも熱心に取り組んでいる。ただ、「質問するのはできない社員の証」と思い込んでいるのか、わからないことがあっても質問せず、自分の判断で仕事を進めて重大なミスをし、しばしば周りを巻き込む。

ときには取引先にまで迷惑をかけるため、上司が謝罪に行かなければならない。にもかかわらず、当の本人は、自己判断で勝手に進めたことが招いた事態の深刻さをきちんと認識していないようだ。

「わからないことがあったら、質問するように」と上司から注意されると、「はい、わかりました」と素直に答えるのだが、やはり自己判断で仕事を進めて重大なミスを繰り返す。その尻ぬぐいを彼だけでできるわけではなく、結局上司や先輩が後始末をさせられることになる。そのため、上司が「わからないことがあったら質問するようにと言っただろうが」と詰問すると、「聞いていません」と答える。上司はたしかにそう言ったはずだし、たとえ聞いていなかったとしても、わからないことがあったら質問するのは当たり前だと上司としては思うのだが、そういう理屈はこの新入社員には通じない。

この新入社員も、強い自己愛ゆえに、自分は何でもできるという幻想的万能感を抱いている可能性が高い。こういうタイプは、自分にわからないことがあるという事実自体を認めようとしない。いや、むしろ認めたくないので、質問などせず、自分の判断で進めてしまう。その結果、取引先にまで迷惑をかける事態を招いて、上司から叱責されても、知らぬ存ぜぬで通そうとする。自分の責任を認めれば、自己愛が傷つくので、それを避けるために責任転嫁して「自分は悪くない」と主張するわけである。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。