【GQ読書案内】幼い頃の記憶を呼び覚ます、生命力を感じる美しい3冊

AI要約

贄川雪さんが、生命力を感じる本を紹介。今月のおすすめは、自然や子どもの美しさを描いた3冊。

アメリカの生物学者、レイチェル・カーソンの著書『センス・オブ・ワンダー』を紹介。子どもたちの驚きと自然への感受性を讃える名作。

森田真生さんによる『センス・オブ・ワンダー』の訳とエッセイも特筆される。自然との共存の重要性を再認識させる書籍。

【GQ読書案内】幼い頃の記憶を呼び覚ます、生命力を感じる美しい3冊

編集者で、書店の選書担当としても活動する贄川雪さんが、月に一度、GQ読者におすすめの本を紹介。今月は「生命力を感じる」がテーマ。

梅雨ながら、すでに夏のような暑さが続きますね。樹木の緑をより濃く感じ、色とりどりに咲くあじさいにカエルやカタツムリを見つけた昔を思い出しながら、春以上に生命が育まれる素晴らしい時期。今月はそんな季節に読みたい、自然や子ども、その生命力を感じる美しい3冊をご紹介します。

『センス・オブ・ワンダー』(著=レイチェル・カーソン、訳とそのつづき=森田真生、絵=西村ツチカ、筑摩書房)

アメリカの生物学者、レイチェル・カーソンさんは、農薬などに使用されている化学物質の危険性を告発し、先駆けて生態系の保護を訴えた『沈黙の春』(1962年)で知られる。『センス・オブ・ワンダー』は、そのさらに前の1956年に雑誌に発表された未完のテキストで、彼女の死後、友人たちによって単行本化されたものだ。子どもたちが持つ「センス・オブ・ワンダー(驚きと不思議に開かれた感受性)」の偉大さ、彼らとともに自然や世界に触れることの喜びがつづられる。65年以上経った現在も色褪せない、世界中で読み継がれている名作だ。

今回、この『センス・オブ・ワンダー』の「訳とそのつづき」を、京都を拠点に研究や執筆活動を行う森田真生さんが手がけた。本書には、森田さんによる新訳と、『僕たちの「センス・オブ・ワンダー」』と題されたエッセイがおさめられている。特にエッセイが素晴らしかった。

かつてカーソンさんが、姪の幼い息子ロジャーとメイン州の海辺や森を散策しながら多様な動植物に触れ合ったように、森田さんも子どもたちと一緒にあらゆる生命に出合いなおしていく。カーソンさんは「センス・オブ・ワンダーを保ち続けようとするなら、この感受性をともに分かち合い、生きる喜びと興奮、不思議を一緒に再発見していってくれる少なくとも一人の大人の助けが必要です」と言ったが、それは逆かもしれない。自然との共存がかつて以上に大きな問題となった今、私たちは失ったセンス・オブ・ワンダーを取り戻すよう子どもたちから学ぶべきだろう。