息子の面倒を弟の妻に見てもらいながら<女性法曹のパイオニア>として飛躍した『虎に翼』モデル・嘉子。ただし特段「女性の問題」に熱心だったわけではなく…

AI要約

嘉子は裁判官として働く一方、家庭では母としての顔を持ち、息子の成長を見守っていた。

寡夫である嘉子は夫を亡くした寂しさに涙し、家族との穏やかな生活を送っていた。

婦人法曹告知版に掲載された写真から、嘉子の笑顔や他の女性法曹とのつながりが窺える。

息子の面倒を弟の妻に見てもらいながら<女性法曹のパイオニア>として飛躍した『虎に翼』モデル・嘉子。ただし特段「女性の問題」に熱心だったわけではなく…

24年4月より放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。伊藤沙莉さん演じる主人公・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんです。先駆者であり続けた彼女が人生を賭けて成し遂げようとしたこととは?当連載にて東京理科大学・神野潔先生がその生涯を辿ります。先生いわく「裁判官として働く嘉子だったが、家に帰れば母としての顔も持っていた」そうで――。

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◆母の顔

女性裁判官としての人生を歩み始めた頃の嘉子は、稲田登戸駅近くで、弟輝彦の家族と一緒に共同生活を送っていました。

息子の芳武は、輝彦の妻温子が面倒をみていたといいます。

芳武は、ゆかり文化幼稚園(藤田復生が創設し、弘田龍太郎が初代園長を務めた幼稚園で、世田谷区成城にあります)に通い、さらに玉川学園小学部へと進んで、すくすくと成長していました。

裁判官として働く嘉子でしたが、家に帰れば母としての顔も持っていました。

嘉子は、芳武が家の近所の踏切を渡って通学しなければならないのが「とても嫌」だと同僚に語っていました。

また、自身の同級生に商店街でばったり会った際には、芳武に水泳を習わせたいと思っているという話をしていたそうです。

穏やかな家族の生活が、そこにはありました。

◆愛児と新しい年を

一方で、嘉子は亡くした夫のことを思い出し、その寂しさから涙を流すこともあったようです。

この頃の嘉子と芳武の様子が、「愛児と新しい年を 和田嘉子さん」というタイトルの大きな写真で、1950(昭和25)年の『法律のひろば』に掲載されています。嘉子のにこやかな笑顔が印象的です。

なお、これは「婦人法曹告知版」というコーナーのページです。女性法曹の姿とそのキャリアとを紹介したコーナーで、他に門上千恵子、渡辺道子、石渡満子、久米愛の写真が掲載されています。

4人とも、嘉子と日本婦人法律家協会などで多くの接点を持ち、一緒に切磋琢磨した女性法曹の「パイオニア」たちでした。