証拠の改竄やもみ消しもやりたい放題…元警察官が告白する「呼気アルコール検査」のあり得ない実態

AI要約

2023年、飲酒運転による死亡事故は112件(前年比8件減)となり、2000年以降で過去最少となった。重傷事故は323件で前年から49件増えた。

ジャーナリストの柳原三佳さんによると、飲酒運転はなくならない理由は、呼気中のアルコール濃度が基準値を上回らない場合、過失運転として扱われるためだという。

記事では、飲酒運転被害者の家族が、主観的な判断や不十分な法令によって被害が適切に処理されない現実を告発している。

2023年、飲酒運転による死亡事故は112件(前年比8件減)となり、2000年以降で過去最少となった。重傷事故は323件で前年から49件増えた。なぜ飲酒運転はなくならないのか。ジャーナリストの柳原三佳さんは「酒を飲んで死亡事故を起こしても、呼気中のアルコール濃度が基準値を大幅に上回らなければ過失運転(運転ミス)として扱われる。警察の呼気検査だけでは不十分であり、実際の数字はもっと多いのではないか」という――。

■長男は春に高校生になるはずだった

 「先日の記事(「スマホを触っていない」と言えば執行猶予に…21歳女子大生の遺族に検察官が放った“信じられない一言” 「ながら運転」に甘すぎる警察と検察の驚きの実態)を読ませていただきました。息子の加害者も運転開始前に酒を飲みながらスマホゲームをしていたことが分かっていますが、加害者の供述から単なる前方不注視とされました。死亡事故が起こってもスマホすら調べないなんて、一般の方は信じられないでしょう。私も息子が被害に遭うまでは、知りませんでした」

 そう語るのは、2015年3月23日、長野県佐久市で長男の樹生(みきお)さん(当時15、中学3年)を飲酒運転によるひき逃げ事件で亡くした和田真理さんです。

 加害者の男(当時42)は、この日の午後10時ごろ、事故直前まで飲食店で約2時間酒を飲み、そのままハンドルを握って、塾帰りに自宅前の横断歩道を渡っていた樹生さんを、中央線をはみ出し、スピードオーバーではねました。しかし、樹生さんを救護することなくコンビニへ直行し、口臭防止のタブレットを購入。歩道に倒れていた樹生さんのもとへ現れたのは、衝突から10分ほど経過してからのことでした。

■飲酒運転の死亡事故が「運転ミス」で済まされる現実

 飲酒、速度違反、横断歩道上での死亡事故、その上、救護義務を怠り、証拠隠滅とも取れる悪質な行為を重ねていた加害者……。ところが検察は、「危険運転致死罪」ではなく、「過失運転致死罪」で起訴。判決は、禁固3年執行猶予5年というものでした。警察が行った呼気アルコール検査の結果、酒気帯びの基準値である0.15mg/Lをわずかに下回っていたため、結果的に「事故に酒の影響はない」と判断されたのです。

 和田さんは語ります。

 「酒を飲んで運転したことは明らかでも、呼気アルコール検査の数値が、酒気帯び運転の基準値である0.15mg/L以上か未満かで、その刑罰には天と地ほどの差が生じます。道路交通法は飲酒運転自体を禁止しています。しかし、呼気アルコール検査の数値が基準値未満であれば、危険運転どころか道路交通法違反(酒気帯び運転)での処分すらありません。令和5年酒気帯び運転の基準値(0.15mg/L)未満の死亡事故は15件発生しています。これは酒気帯び運転(0.25mg/L未満)の死亡事故5件の3倍の件数です。また、飲酒検知不能の“飲酒あり”の死亡事故が13件も発生していることにも問題を感じます。厳罰化されたはずの飲酒運転ですが、そもそも呼気検査の数値は本当に正確だといえるのでしょうか」