アンテナショップに異変 PRの拠点、閉店や移転相次ぐ 東京以外では増

AI要約

地方自治体がアンテナショップの異変に直面している。宮城県の池袋店が閉店し、新潟県や北陸3県が移転や合同店舗を設立するなど大きな変化がある。

地価高騰やネット販売の増加などが背景にあり、自治体は新たな販売策を模索している。コロナ後の戦略を描く自治体も多い。

アンテナショップの店舗数は減少している中、東京以外の店舗が増加傾向にあり、特に大阪地域では3県と他の自治体が積極的に店舗展開を行っている。

アンテナショップに異変 PRの拠点、閉店や移転相次ぐ 東京以外では増

 地方自治体が農産物や工芸などの特産品を販売したり、移住情報を提供したりするアンテナショップに今年、異変が相次いでいる。宮城県が来年20周年となる東京・池袋のショップを秋にも閉店する一方、新潟県が都心の別の場所に移転したり、富山、石川、福井の北陸3県が大阪・梅田に合同店舗を新設したりするなど大きな変化が目立つ。何が起きているのか――。

 「閉店したらパートのおばあちゃん数人を失業させてしまう」。宮城県大崎市の農家、浦上和子さん(72)が5月中旬、不安そうに言った。「わが家は働くデイサービス」を掲げる浦上さんは、地域に住む同年代の女性10人を雇用。素材を生かした無添加の味わいが人気の「しそ巻き」や「ふきのとうみそ」など手作り品を、10年前から池袋のアンテナショップ「宮城ふるさとプラザ」に出す。

 しかし、高騰を続ける地価や増えるネット販売などを背景に、県は店舗が入居する商業ビルの賃貸契約(現行は年1億3147万円)を更新しないと決定。満期の来年2月を前に閉店し、原状回復工事に入る。県は新たな販売策を検討しているが、浦上さんは「私たち宮城の農家が誇る良いものを、多くの人が買える仕組みを考えてほしい」と願う。

 一般社団法人・地域活性化センター(東京)によると、都内に展開する自治体アンテナショップは2020年の81店をピークに減少、23年は67店となった。要因は百貨店やスーパーなどに店を置く「集合型」が4分の1の5店に減ったためで、ビルなどに入居する「独立型」は62店と大きな変化はなかった。

 ただ、今年は移転が相次いでいる。石川県は北陸新幹線延伸を受けて3月に銀座からJR東京駅八重洲口へ移転、新潟県は8月に表参道から銀座へ移す。各県それぞれがコロナ後の戦略を描く。

 コロナ前の19年から減少していた東京以外の店舗は、20年75店、21年83店、22年87店、23年97店と増加に転じた。特に大阪・関西万博を翌年に控えた今年は、北陸3県に加え、高知県も7月に大阪に開店、岡山県倉敷市も同県では初めて大阪に店を出す。

 一方、埼玉県行田市のように、観光客の誘致とセットで市内に店舗を開く“域内型”も少なくない。

 同センター担当者はアンテナショップの状況について、「『5類』移行後の売上回復が鮮明になった一方、地価高騰、デジタル化、インバウンド(訪日外国人)、24年物流問題など課題は多い」と指摘。大きな変化が起きているという。(栗田慎一)