裁判官の昇給・昇格の基準は「ブラックボックス」? “現職の裁判官”が語る、裁判所内部の「昇給・昇格差別」の知られざる実態とは

AI要約

竹内浩史判事が裁判所内での昇給・昇格差別に抗議し、国を提訴する意向を表明した。

竹内判事は号俸と役職の対応関係が不明確で、自身が昇進するべき階級に留まっていると主張している。

資料に基づく分析から、竹内判事の昇進には合理的な説明がされておらず、不当な差別がある可能性が示唆されている。

裁判官の昇給・昇格の基準は「ブラックボックス」?  “現職の裁判官”が語る、裁判所内部の「昇給・昇格差別」の知られざる実態とは

津地方裁判所民事部総括 竹内浩史判事が4月16日、「転勤によって地域手当が減るのは憲法80条2項に違反する」として、国を相手取り、減額分の合計約240万円の支払いを求めて訴えを提起する意向を明らかにした。現職の裁判官が国を提訴するという異例の事態。竹内判事は、自身に対する「昇給・昇格差別」の違法性についても争う意向であるという。裁判所の内部でどのような「差別」が行われているというのか。その実態と、それを裏付ける根拠について、竹内判事に話を聞いた。

――竹内さんご自身が受けているという昇給・昇格差別とは、どのようなものでしょうか?

竹内浩史判事:

「裁判官の昇給は、『号俸』といわれる階級と連動しています。また、号俸はおおむね役職と連動しているとみられています。おおむね、というのは、号俸と役職との対応関係が明らかにされていないからです。

号俸については、最高裁判所長官、最高裁のその他の判事、高等裁判所の長官(東京とその他とで区別)は別格で、それ以外の裁判官については、判事が上から1号~8号、判事補は上から1号~12号に分かれています([図表1]参照)。

私は本来『2号』あるいは『1号』に相当するはずなのに、『3号』のまま据え置かれています。このことが、昇格・昇給差別にあたると考えています」

――「号俸」と役職との対応関係が明らかにされてない中で、昇給・昇格差別を裏付ける資料・根拠としてどのようなものが挙げられますか?

竹内浩史判事:

「号俸ごとの人数と、実際の役職ごとの人数を照らし合わせれば、ある程度は号俸と役職の対応関係を推測することができます。

そうすると、少なくとも、私の場合、明らかに号俸と役職が釣り合っていないということが見てとれるのです。

具体的な資料をもとに説明しましょう。弁護士の山中理司さんが、裁判所に関連する情報を、情報公開制度等を活用して収集し、ブログで公開しています([図表2]参照)。

まず、『1号』は128人です。人数から察するに、まず、高等裁判所の部総括が約80人は含まれているはずです。残る48人については、地方裁判所・家庭裁判所の所長が考えられます。ただし、地裁・家裁の所長でも2号の人がちらほらいるという話を聞きます。

次に、『2号』は171人です。この人数から常識的に考えると、地方裁判所の部総括またはその経験者が含まれていると考えられます。

なお、『1号』『2号』で考えられる役職としては、他に、最高裁判所の首席調査官、司法研修所長や研修所の教官の一部が考えられます。また、東京地方裁判所の部総括の中にも、『1号』の判事が複数人いると聞いています。

そうだとすると、私は津地方裁判所のただ一人の民事部の部総括なので、本来少なくとも『2号』には該当していなければならないはずです。

東京地方裁判所の場合、民事部は51部まであり、重要な事件は各部に割り振られます。これに対して、津地方裁判所の民事部は一つしかなく、三重県内の重要な民事事件とすべての行政事件については必ず私が裁判長を担当しなければなりません。それなのに、私が『3号』のままなのは不合理と言わざるを得ません。

このように、客観的な数値データ・職務内容からみて、私が『3号』にとどまっていることは、明らかにつじつまが合っていないと考えられるのです。

最高裁判所の人事局がこのことについて合理的な説明をつけるのはきわめて難しいはずです」