6カ国のバックグラウンド、May J.さんが歌に込める魂 ピースデー

AI要約

歌手のMay J.(メイジェイ)さんが国際平和デーに出演する。自身のバックグラウンドや歩みを振り返りながら、世界情勢や出産が彼女の音楽に与えた影響について語る。

メイジェイさんは異なる国の血を引く母親と日本人の父親の間に生まれ、多国籍な環境で育つ。自身のルーツであるイランを訪れた際の感動や、世界での紛争に対する拮抗感を表現している。

音楽活動における苦労や夢の追求、そして平和をテーマにした楽曲に込められた思いについても述べられており、21日のイベントに向けての意気込みが語られている。

6カ国のバックグラウンド、May J.さんが歌に込める魂 ピースデー

 歌手のMay J.(メイジェイ)さんが国際平和デー(通称ピースデー)の21日、東京・代々木公園で開催される野外イベント「PEACE DAY2024@代々木公園」に出演する。国連が「たった一日でもいいから、争いや戦争のない日を」と定めたピースデー。母親がイラン出身のメイジェイさんは、6カ国のバックグラウンドを持ち、昨年誕生した娘はまもなく1歳になる。世界で紛争が絶えない中、どんなメッセージを伝えようとしているのか。インタビューでメイジェイさんの歩みをたどった。

 メイジェイさんは日本人の父と、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、英国の血を引く母の間で1988年に生まれた。ディズニー映画が大好きで、幼い頃からダンス、ピアノ、声楽などを学んだ。高校時代はインターナショナルスクールに通い、メジャーデビューしたのは2006年。母方のルーツであるイランを初めて訪れたのは、ディズニー映画「アナと雪の女王」の日本版で、自身が歌う主題歌「Let It Go~ありのままで~」が大ブレークした14年だった。

 「ネガティブなニュースが伝えられることも多いイランですが、実際に訪れて印象は180度変わりました。親戚が15人ほど集まって歓待してくれましたが、笑ったり、冗談を言い合ったりするのがみんな大好き。ケバブなどの料理でもてなしてくれて、輪になって話をしたり、歌ったり。日本と変わらない家族の温かさを感じました。ただ、背に荷物を積んだロバが普通に道を歩いている光景を見て、驚きましたね」

 国際情勢に目を転じると、イランはイスラエルと敵対関係にあり、ロシアはウクライナ侵攻を続けている。自身のルーツが当事国になっている現状をどう見ているのか。「私にはロシアの友人もいますが、戦争に反対の立場です。イランの人たちもそうですが、自由に発言できない。私は、どうにかしてあげたいけど、何もしてあげられない」。そんなもどかしさを抱えているという。

 世界で起きていることや自身の出産は、今春リリースしたアルバム「AURORA(オーロラ)」にも影響を与えた、と語る。レコーディングは妊娠中に行われ、ラストナンバーの「Sweetest Crime」はピアニストのハラミちゃんらとのコラボレーションだ。

 「作詞、作曲などにあたって、おなかの中にいる娘のことを思い浮かべました。娘は幸せをもたらしてくれるだろうし、いろいろな壁も立ちはだかると思う。歌詞でストレートに表現してはいませんが、いい時も悪い時も、どんな時でも一緒に歩んでいこう、と。そんな決意を込めた曲です。生まれてくる娘にとっては、何もかもが初めてのこと。まだ空気の存在も知らないし、空も見たことがない。そんな娘に、全てを教えてあげたいとの思いが詰まっています」

 アルバムに収められた「Spread Love」という「愛」をテーマにした曲も、歌詞では直接触れていないものの、戦争や差別が存在するこの世界を意識してつくられたという。

 ◇夢をかなえるために大事なこと

 幼い頃からの夢をかなえ、06年に18歳でメジャーデビューしたメイジェイさんだが、その後の下積み生活は長かった。オリジナルアルバムを何枚リリースしてもヒットせず、クラブでライブをこなす毎日。「なぜ自分の歌声は多くの人に届かないの?」「これ以上どうすればいいんだろう」。自問する日々が続く中、12年にテレビの「カラオケ対決番組」に出演したのが転機になった。「26連勝」して注目され、13年にカバーソングを収めたアルバムが大ヒット。そして、「Let It Go」の依頼が舞い込んだ。それまでくじけなかった理由を尋ねると、こう語った。

 「夢って、そんなに簡単にはかないませんよね。いろんな人の支えがあって、頑張ることができましたが、私にとって、ディズニーの楽曲を歌うことが小さい頃からの夢でした。そのことを強く願って、口に出して人に伝えてきたら、かなった。一番大事なことは自分を信じてあげることだと思う。『アナと雪の女王』の映画公開から今年でちょうど10年。この曲をきっかけに、小さい子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまで、多くの人と音楽でつながることができた。本当に感謝しています」

 ピースデーの会場では「Let It Go」をはじめ、カバー曲のレパートリーである「ハナミズキ」も歌う予定だ。「ハナミズキ」は歌手の一青窈さんが、01年の米同時多発テロに着想を得て、自ら作詞したことで知られる。一体、どんなステージになるのだろうか。

 「平和について考えるイベントというと、重いテーマと感じるかもしれませんが、音楽はみんなが楽しめるもの。フェスに行く感覚で気軽に足を運んでほしい。ファミリーで訪れる人もたくさんいると思うので、子どもから大人まで楽しんでもらえるセットリストを考えています。歌詞の一つのフレーズがその人の心に響いて、それがきっかけで人生が変わったという話もよく聞きます。だから私は、どんな場所でも魂を込めて歌います。そして、会場に集まる皆さんと一緒に未来をつくっていきたい」

 21日のイベントは「NPO法人PEACE DAY」が主催し、午前11時50分から午後7時半まで。メイジェイさんは午後5時25分から出演予定で、タイムテーブルは公式ホームページ参照。入場無料。【沢田石洋史】