住み込みで介護の家政婦が急死過重業務の「労災」認め遺族が逆転勝訴 東京高裁

AI要約

女性が家政婦と介護ヘルパーとして働いた後に亡くなり、労災を支給されなかった問題で、夫が国を訴えた裁判で逆転勝訴が言い渡された。

女性は過重な業務をこなして亡くなったとし、労災を申請したが認められず、夫が提訴。高裁では女性の労災が認められた。

判決を受けて厚生労働省は今後の対応について検討する方針。

住み込みで介護の家政婦が急死過重業務の「労災」認め遺族が逆転勝訴 東京高裁

家政婦と介護ヘルパーを兼ねて1週間住み込みで働いた後に亡くなった女性に労災を支給しなかった処分は違法だとして女性の夫(77)が国を訴えた裁判で、東京高裁は女性の労災を認め、遺族側の逆転勝訴を言い渡しました。

当時68歳の女性は、2015年、家政婦と介護ヘルパーとして登録していた会社から、認知症で寝たきりの高齢女性の自宅に派遣され、1週間住み込みで家事や介護にあたり勤務を終えた日に倒れ、翌日、亡くなりました。

女性は24時間対応を要する過重な業務で亡くなったとして夫が労災を申請しましたが、個人の家庭に雇われた家政婦は労働基準法が定める「家事使用人」にあたり、労災の対象外だとして認められず、夫は、国に処分を取り消すよう求め提訴しました。

一審の東京地裁は女性の勤務内容のうち「家事一般の業務については家事使用人に該当する」として労災の対象外だとした上で、介護業務は、1日あたり合計4時半にとどまるため女性の労災を認めず、夫側は控訴していました。

19日、東京高裁は判決で、女性の業務について「家事業務と介護は労働時間も賃金も明確に区分されておらず、一体として会社の業務といえる」と指摘し、女性の家事業務についても労災の対象だと認めました。

そのうえで、「女性の労働時間は1日15時間と認められ、休憩のための専用の部屋も与えられず、時間的にも質的にも疲労を回復させるに足りる睡眠を確保することが困難だった」と判断。「短期間の過重業務に該当する」として、女性の労災を支給しなかった処分を取り消し、夫側の逆転勝訴となる判決を言い渡しました。

夫は会見で、「きょうまで裁判を戦ってきたのは、ただ亡き妻を労働者として認めてもらいたいというその一点だった」「判決はいまも家事使用人として働いている多くのみなさんを救い幸せにするものだ」「正しい判決をしてくれて本当に感謝している」と話しました。

判決を受けて厚生労働省は、「国の主張が受け入れられなかったものと承知している。今後の対応については、判決内容を十分に精査するとともに、関係機関とも協議した上で適切に対応してまいりたい」とコメントしています。