学校の「体育座り」長時間強要しない 滋賀・近江八幡市教委

AI要約

滋賀県近江八幡市教育委員会は、子どもの腰痛リスクなどを考慮し、体育座りについて検証を進める方針を示した。

体育座りは腰痛の可能性が指摘されており、同姿勢を長時間続けないよう注意が必要とされている。

研究結果によると、体育座りやあぐらなどの座り方は同じ姿勢を続けることが問題であり、定期的な休憩が重要である。

 子どもの腰痛リスクなどの可能性が指摘される「体育座り」について、滋賀県近江八幡市教育委員会は今後、リスクを検証していくとともに「児童を座らせる際、長時間、同じ姿勢を強要することのないように」と市内の小中学校16校に連絡する方針を固めた。同市の安田全男(まさお)教育長が9月6日、市議会で「体育座りは健康リスクの可能性を示唆する研究もあり、改めて強要しないように周知する」と述べていた。

 「体育座り」は閉じた両膝を抱えた座り方で、ほとんどの学校で取り入れられている姿勢だ。ただ、腰痛などにつながる可能性も指摘されており、全国各地で見直す学校も出始めている。安田教育長は市議会本会議で議員の質問に答え、「話を聞く際、児童生徒が体育座りをすることはあるが、長時間にわたって強要することはない。内臓を圧迫する危険性や腰痛リスクが高まる可能性について示唆する研究がある」と指摘した上で、「改めてリスクについて周知し、体育座りを強要しないよう合わせて周知する」と述べた。

 市教委は今後、体育座りのリスクについて研究結果などを確認しながら検討するとともに、「まずは、話を聞かせる際に児童生徒を座らせる場合、体育座りに限らず同じ姿勢を長時間強要することのないよう、各学校に連絡していく」という方針を示している。

 こうした体育座りのリスクについては約10年前から指摘する声が上がり、見直しが進むきっかけとなった。

 国際医学技術専門学校(名古屋市西区)の専任教員で理学療法士の増田一太さんは2013年、医療機関に腰痛を訴える子どものリハビリに当たったことを契機に、小学生から高校生の約1000人にアンケートを実施。回答者の12.7%が腰痛を感じていると答えたという。その後も研究を続け、座った状態でのレントゲン計測で体育座りが背骨に負担をかけやすいことが分かった。

 23年の日本体育・スポーツ・健康学会では、座位姿勢の身体的精神的負荷について研究結果を発表。体育座りは長時間続けると、尻や腰に痛みを感じる割合が高く、被験者のリタイア率が高かった。あぐらも足のしびれや足の痛みを感じ、立て膝の姿勢も腰、尻、足への痛みが高い割合で出るという結果だった。

 いずれの座り方も同じ姿勢を続けると痛みを感じ、体育座りでも10分程度で休憩を入れれば、負担感はあぐらと同程度という結果となった。増田さんは「体育座りが悪いわけではなく、同じ姿勢を続けるのがよくない」と指摘する。あぐらでは、交差した左右の足を入れ替えやすく、背筋を伸ばすなど背骨を動かすのも容易で楽な姿勢を取りやすい。一方、体育座りは腕で膝を抱え、背骨を動かさないままの姿勢を取り続ける傾向があり、腰痛になりやすいという。

 増田さんは「体育座りは、朝礼などで話を聞く際、長時間立ったままでは負担が大きいと、児童生徒への配慮として取り入れられたはずが、同じ姿勢が続き、痛くて話に集中できなければ本末転倒。子どもたちは先生がいいと言わなければ、同じ姿勢を取り続ける可能性がある。話をする先生がメリハリを入れることで随分改善されるはずだ」と提言している。