ピロリ菌、さまざまな病気の原因に ~胃がんリスク高く~

AI要約

ピロリ菌は胃の幽門に生息するらせん菌で、胃酸を中和する特殊な酵素を持っており、胃の中で生きられる。

感染者は胃炎を起こすことが多く、さまざまな病気の原因となる可能性がある。幼少期に母親から感染するケースもある。

ピロリ菌の感染を判断する方法は直接検査、酵素反応を活用した検査、抗体測定などがある。

ピロリ菌、さまざまな病気の原因に ~胃がんリスク高く~

 多くの病気と関わりがあるとも言われる「ピロリ菌」。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。診断・治療には内視鏡が役立ちます。

 ピロリ菌の正しい名前はHelicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)で、日本語で「胃の幽門(出口部分)にいるらせん菌」という意味になります。ピロリ菌にはべん毛と呼ばれる4~8本の毛が生えており、泳ぐように動くことが可能です[1]。

 1979年、オーストラリアのウォーレン医師はマーシャル医師と共に胃炎の研究を始め、ピロリ菌と思われる菌を発見します。マーシャル氏が菌を自分で飲み込んでみたところ、胃の中で生き続け、胃炎を起こすことが確認・証明されました[2]。

 私たちの胃の中では胃酸が分泌されており、細菌は生きていけません。しかし、ピロリ菌はウレアーゼという特殊な酵素を出してアンモニアを産生し、胃酸を中和します。この結果、ピロリ菌の周囲は中性になり、胃の中でも生きられるわけです。

 下水道が発達していなかった時代には井戸水などを飲むことで胃の中にピロリ菌が入ってくるケースが多かったのですが、現在では保菌者の唾液などを介した感染が中心とされます。特に、幼少期に母親から感染する可能性が指摘されており、食べ物の口移しなどが理由として考えられています[3]。

 ピロリ菌に感染しても全員が胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんになるわけではありません。しかし、感染者の多くは胃炎を起こし、他にも胃MALTリンパ腫、胃過形成ポリープ、機能性ディスペプシア、胃食道逆流症、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血といったさまざまな病気の原因となります。じんましんやパーキンソン病、アルツハイマー病や糖尿病との関連も疑われており、感染した場合には除菌を強くお勧めします。

 ピロリ菌の感染を判断する検査は主に次の三つです。

 1. 直接検査

 直接検査の方法は三つあります。

 (1)培養検査:内視鏡を挿入し、胃の粘膜をつまんでピロリ菌の有無を調べる。除菌する際に使われる抗生物質のクラリスロマイシンが効果的かどうかも同時に調べられる。

 (2)鏡検法:採取した胃粘膜組織を顕微鏡で観察し、菌が存在するかを確認する。

 (3)ふん便中抗原測定:便に排出されたピロリ菌を調べる。

 2. 酵素反応を活用

 ウレアーゼ反応を利用する検査方法は二つです。

 (1)ラピッドウレアーゼテスト(RUT):内視鏡検査で採取した胃粘膜組織を試薬で反応させ、ピロリ菌が産生するアンモニアを検出する。

 (2)尿素呼気試験(UBT):ピロリ菌に感染すると、胃の中の尿素がウレアーゼによってアンモニアと二酸化炭素に分解される。患者に尿素を含む検査液を飲んでもらい、前後の呼気を調べて感染を診断する。

 3. 抗体測定

 抗体測定法と呼ばれ、血液中の抗体を直接調べる方法と尿中の抗体を調べる方法があります。