地区ごと「集団移転」を模索する動き広がる 能登地震8カ月、過疎・高齢化で集落維持困難

AI要約

能登半島地震で被害が出た石川県、浦上地区の住民が集団移転を模索。地震から8カ月経ち、地震による被害や過疎化の問題が浮き彫りに。

浦上地区内に仮設住宅が建設され、多くの住民が公営住宅への入居を希望。要望書を市に提出し、集団移転を推進する動きが広がっている。

市は集団移転を支援する方針で補正予算案を提出。コンパクトシティ構想による効率化を図る考え。

地区ごと「集団移転」を模索する動き広がる 能登地震8カ月、過疎・高齢化で集落維持困難

能登半島地震で大きな被害が出た石川県で、自力での住宅再建やコミュニティー維持の難しさを理由に、安全なエリアへの集団移転を模索する動きが出始めている。同県輪島市門前町浦上地区の住民らは8月、地区内での集団移転と、住まいとなる公営住宅の建設を市に要望。集団移転についての住民の意見を取りまとめる動きは他の自治体にも広がりつつある。地震は9月1日、発生から8カ月となった。

輪島市西部の山間部に位置する浦上地区。26の集落が点在し、地震前の人口は235世帯455人だった。地区の中心部にある浦上公民館長の喜田充さん(75)によると、実際に住んでいたのは430人ほど。大半は高齢者で単身世帯も多かった。過疎化と高齢化で住人がわずかとなり、もともと将来の存続が危ぶまれる集落もあったという。

地震では周辺の道路が寸断され、住民が一時孤立。多くの建物が全壊や半壊と判定された。住民が避難するなどして無人になった集落が複数あるほか、輪島市街地につながる国道249号は現在も通行止めが続く。

こうした状況を踏まえ、浦上地区内に完成した仮設住宅で暮らす62世帯を対象にアンケートを実施したところ、回答者の8割弱が災害公営住宅への入居を希望した。災害公営住宅は、災害で住居を失った人たちのために自治体が国の助成を受けて整備する公営住宅で、低い家賃で住むことができる。

区長会長でもある喜田さんらは、地区の中心部に災害公営住宅を集約した「コンパクトで効率的なコミュニティー」の建設を求める要望書をまとめ、8月初めに市役所で坂口茂市長に手渡した。

喜田さんは「仮設住宅には入居期限がある。高齢のため住宅を自力で再建するのが難しい住民がいるし、土砂災害のリスクが高く、住み続けるのが難しい集落もある」と訴える。

■集住で効率化

要望を受けた市は集団移転を全面的にバックアップする方針。今月3日開会の市議会に、候補地の測量費用を盛り込んだ補正予算案を提出する。

集落が点在するよりも集まって暮らす方が、水道や道路などの維持費を抑えられる利点がある。東日本大震災の被災地でも、住宅や商業施設をまとめた「コンパクトシティ」が導入された。市の担当者は「持続可能なコンパクトシティの観点からも、まとまって暮らすメリットがある」と話す。