「部屋が借りられない」1人暮らしの高齢者 苦しい賃貸事情 100歳時代の歩き方

AI要約

高齢者が賃貸住宅への入居を断られるケースが後を絶たない。大家の約7割が高齢者に住宅を貸すことに拒否感があるという現状について報告。

1人暮らしの高齢者が住居探しで困難を抱える現状や、孤独死や残された物の処理への懸念がある背景について述べられている。

支援法人や民間のサービスを活用し、高齢者が安心して住居を見つけるための取り組みについて報告。

「部屋が借りられない」1人暮らしの高齢者 苦しい賃貸事情 100歳時代の歩き方

1人暮らしの高齢者が賃貸住宅への入居を断られるケースが後を絶たない。国土交通省の調査によると、大家の約7割が高齢者に住宅を貸すことに拒否感があるという。孤独死などのリスクへの懸念があるとみられる。1人暮らしの高齢者は増加の一途で、対策は急務だ。

東京都内の分譲マンションに賃貸で住んでいた自営業の74歳の男性は昨年6月に妻に先立たれ、1人で暮らしていた。今年4月、部屋の所有者から「売却する」と立ち退きを求められた。男性は不動産会社で部屋を探したが、希望した3つの物件はいずれも断られた。

「都営住宅も条件に合う物件は空きがないようで、もうだめだと思った」

男性は役所に紹介された居住支援法人「高齢者住まい相談室こたつ」(東京都立川市)に駆け込んだ。

居住支援法人は都道府県から指定を受け、住まいの確保が困難な高齢者などの入居を支援する。高齢者住まい相談室こたつは、デイサービスなどを運営する「こたつ生活介護」が平成29年に開設。松田朗室長は「身寄りのない1人暮らしの高齢者の住居探しはハードルが高い」と話す。

1人暮らしの高齢者は令和2年時点で738万人。22年までには1千万人を超えるとの推計もある。国交省の調査によると、高齢者に対して拒否感がある大家は66%。高齢者の入居を制限する理由は「居室内での死亡事故などに対する不安」が約9割と圧倒的に多かった。孤独死のほか、残された物の処理などの懸念もあるとみられる。日本少額短期保険協会の調査では、孤独死で残された物の処理に平均23万7218円、原状回復に平均39万7158円かかるという。

高齢者ならではのハードルもある。高齢者などの住宅探しを支援する、東京都台東区の「家や不動産」の會田雄一代表取締役によると、年金暮らしや歩行困難のため「家賃5万円以内」「1階またはエレベーター付き」など、条件が厳しくなりがちだという。會田さんは「大家さんや管理会社も生活がかかっている。誰が悪いわけではない。高齢者の住まい探しには公的な支援も必要だ」と話す。

冒頭の男性は介護保険制度を利用しておらず、親族もいないため、まず民間の身元保証サービスを利用。見守りサービスがついた家賃債務保証も契約し、部屋を借りることができた。