「とにかく、有名な大学病院がいいんです」…!紹介状を書いてほしいと依頼された開業医が明かす「虚しい瞬間」

AI要約

医者が患者をほかの医療機関に紹介する際の考え方や理由について解説している。

食物アレルギーの診断方法や治療方針について具体的な例を挙げながら説明している。

小児クリニックでの診療において、他の科との境界領域の病気をどこまで診るかについて悩む医者の姿を描いている。

「とにかく、有名な大学病院がいいんです」…!紹介状を書いてほしいと依頼された開業医が明かす「虚しい瞬間」

超高齢社会を迎え、ますます身近になってくる医者と患者。しかし、「長すぎる待ち時間」「冷たい医者の態度」など、医療に対する患者の不満や不信は尽きない。

悩んでいる患者を前にして、医者は何を考えているのか――。

いま話題の書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房刊)の著者で外科医の松永正訓氏が、知られざる「医者の本音」を明かす。

クリニックで日々診療を行なっていると、紹介状を書いて患者さんをほかの医療機関に紹介することがよくあります。もちろん、重症肺炎とか腸重積とかの急を要する外科疾患では、相手の医療機関に電話を入れ、受け入れを確認してから紹介状を書いて患者家族に行ってもらいます。

ただ、そうした緊急でなくても、自分の能力を超えていると判断したときには、ほかの医療機関に紹介します。

たとえば、食物アレルギー。20年くらい前はアレルギーの原因となる食物を(血液検査などで)特定し、「除去してください」と指導していました。

しかし最近では考え方が変わり、可能な限り安全な範囲で食べるようにすることが、結局はアレルギーを消していくということが分かっています。採血はあくまでも参考程度で、食物アレルギーの診断は負荷テストで行ないます。

卵なら卵を何グラムまで食べても大丈夫なのか、実際に食べて把握するのです。この検査は危険が伴いますので、入院が前提になります。そのため、大きな病院に紹介状を書いて行ってもらうことが多々あります。

それから、小児クリニックは非常に間口の広いクリニックなので、中には、ほかの科との境界領域の病気も診ます。たとえば、「ものもらい」(麦粒腫)の患者さん。これは眼科と重なります。中耳炎は耳鼻科と重なります、アトピー性皮膚炎は皮膚科と重なります。

こうした病気をどこまで自分で診るかは大変難しいと言えます。もちろん自分で治しきることができれば、患者家族の負担もないのでベストです。しかし、判断を誤れば、なかなか改善せずに時間だけが経過していくことがあります。

こういうときに、いかにスムーズに患者さんを手放すことができるのか、つまり、自分の限界を知ってほかの医者に診てもらう判断ができるのかが非常に重要になります。

また、単にほかの医療機関に紹介すればいいのではなく、「腕のいい」医者をちゃんと知っていて、そこに紹介する必要があります。