JERAのグリーンウォッシュ広告に日本広告審査機構は動かず、NPOが国連事務総長に訴え

AI要約

特定非営利活動法人気候ネットワークは、JERAの「ゼロエミッション火力」広告に関して国連事務総長に情報提供した。

日本政府が推進するアンモニア火力発電について、燃焼時のCO2排出や石炭火力延命策の議論があり、JERAのアンモニア混焼に対する広告も問題視されている。

グテーレス事務総長は化石燃料業界の広告禁止を呼びかけ、気候ネットワークはJERAの広告とJAROの判断に関し、事務総長に危機感を訴えた。

特定非営利活動法人気候ネットワーク(京都市)はこのほど、発電大手JERAの「ゼロエミッション火力」広告に関して、グテーレス国連事務総長に情報提供したことを明らかにした。同NPOは、日本のJARO(日本広告審査機構)に対し、JERAの広告中止を求める申し立てを行ったが、JAROは動かなかった。同NPOは事態の打開のため、国際世論に訴えかける形を取ったとみられる。(オルタナ副編集長=吉田広子)

日本政府は「グリーントランスフォーメーション(GX)戦略」のもと、石炭にアンモニアを混ぜて燃焼させるアンモニア火力発電を推進している。アンモニアは燃焼時にCO2を排出しないため、日本政府は「非化石エネルギー源」と位置付けた。

しかし、アンモニアを混焼しても、化石燃料を使い続けるため、石炭火力の「延命策」だとの批判が国内で相次いだ。

そもそもアンモニアのほとんどは化石燃料由来で、原料は褐炭やLNGだ。燃焼時にNOx(窒素酸化物)を排出することから、大気汚染も問題視されている。

国内火力発電最大手のJERAは2021年から、アンモニア混焼を「CO2が出ない火」「ゼロエミッション火力」と標ぼうする宣伝を始めた。2023年版のCMでは、「化石燃料に代わる新エネルギー源、燃やしてもCO2が出ないアンモニア」とのナレーションが流れる。アンモニアの製造時や輸送時のCO2排出には言及していない。

同社は2024年4月、JERA碧南火力発電所(愛知県碧南市)で、アンモニアを20%混焼する実証実験を開始した。

一方、グテーレス事務総長は2024年6月、すべての国で化石燃料業界の広告を禁止するように呼び掛けた。化石燃料業界を「気候カオス(無秩序)のゴッドファーザー」と呼び、タバコと同様に広告を禁止すべきだと主張した。メディアなどが化石燃料業界から多額の費用を受け取り、広告を掲載することは「地球の破壊」に加担することだと指摘する。

気候ネットワークは、事務総長に対して、JERAのグリーンウォッシュ広告とJAROの判断に関する書簡を送付した。これによりアンモニア混焼が石炭火力の排出削減対策と位置付けられている危機感を訴えた。