JR東海「関連事業」徹底解剖 流通業がコロナで打撃も不動産は成長中!
リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる政治的な論争や、名誉会長・葛西敬之氏の影響もあり、JR東海には複雑なイメージがあるが、同社の鉄道事業の成功と未来へのビジョンが注目される。
JR東海の関連事業は流通業、不動産業、その他に分かれており、営業収益には大きな影響はないが、着実に成長を遂げている。
関連事業の中でも、ジェイアール高島屋やJR東海ホテルズなどが注目され、営業収益約1100億円を達成している。
リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる政治的な論争や、「国商」「最後のフィクサー」と呼ばれた名誉会長・葛西敬之氏(2022年没)などの影響もあり、JR東海は多くの人にとって複雑なイメージを抱かせる存在かもしれない。しかし、一般の人たちが本当に知りたいのは、創業以来の長い歴史に刻まれた、同社の鉄道事業の成功と未来への壮大なビジョンではないか。本連載「リニアはさておき」では、創業から現在に至るまでの歴史を掘り下げ、鉄道事業の神髄を探っていく。
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今回は、JR東海の関連事業について話をしよう。
JR東海の関連事業は、経営理念のなかでは在来線とともに“社会基盤”と位置付けられている。将棋の駒でいえば、
・新幹線:王将
・在来線と関連事業:飛車と角
のようなイメージとなる。
関連事業は、流通業、不動産業、その他に分けられている。流通業は、百貨店事業を営むジェイアール東海高島屋や、車内や駅構内における物品販売を行うJR東海リテイリング・プラスが該当する。
不動産業では、駅ビル等の不動産賃貸事業のジェイアールセントラルビル、新横浜ステーション開発のほか、不動産開発事業や住宅事業を営むジェイアール東海不動産がそうだ。
その他には、アソシアブランドを中心にホテルを運営するジェイアール東海ホテルズ、旅行業のジェイアール東海ツアーズ、広告業のジェイアール東海エイジェンシーのほか、鉄道車両製造を行う日本車両製造、鉄道関連の業務を担うジェイアール東海建設、東海交通機械などがある。
ちなみに、高速バスや貸切バス事業を営むジェイアール東海バス株式会社は、運輸業セグメントに含まれている。
関連事業が、JR東海の営業収益に占める割合は決して大きくない。2023年度における外部売上高に基づく各セグメントの比率は、
・運輸業:81%
・流通業:9%
・不動産業:3%
・その他:7%
である。
比率だけみると運輸業が非常に大きく、流通業や不動産業といった関連事業にあまり力を入れていないように思える。そこで、セグメント別の営業収益の推移をみてみよう。
●1999年度
・流通業:983億円
・不動産業:243億円
・その他:835億円
・合計:2061億円
●2009年度
・流通業:1886億円
・不動産業:667億円
・その他:2555億円
・合計:5108億円
●2019年度
・流通業:2632億円
・不動産業:799億円
・その他:2722億円
・合計:6153億円
●2021年度
・流通業:1027億円
・不動産業:722億円
・その他:2344億円
・合計:4093億円
●2023年度
・流通業:1606億円
・不動産業:832億円
・その他:2552億円
・合計:4990億円
1999(平成11)年度からのデータとなるが、着実に営業収益を伸ばしていることがわかる。ただ、流通業がコロナ禍により大幅に落ち込み、以降の伸び悩みが目立つ。2024年度も1620億円と微増と予想していることから、流通業を取り巻く環境の厳しさがうかがえる。
JR東海の関連事業の歴史で大きな出来事といえば、2000年3月のジェイアール名古屋タカシマヤ、同年5月の名古屋マリオットアソシアホテルの開業、および2017年4月のJRゲートタワー全面開業だろう。2023年度の実績では、
・JR東海高島屋:571億円
・JRセントラルビル:329億円
・JR東海ホテルズ:260億円
と合計約1100億円の営業収益をあげており、今では関連事業の中心といえよう。