日本の夏は“ホラーの季節” 理由は「涼しくなるから」ではなく…歌舞伎との深い関係
夏の風物詩としてのお化け屋敷や怪談話は、日本独自の文化であり、それは歌舞伎と密接な関係がある。
歌舞伎の興行が真夏に低調だったため、真夏には怪談話が上映され、お客を楽しませていた。
怪談話は暑い夏の時期にも歌舞伎を見に来てもらうための工夫であり、日本独自のホラー文化が根付くきっかけとなった。
夏の風物詩といえば、お化け屋敷や怪談話を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、これは日本独自の文化だということを知っていましたか?
なぜ欧米と違い、日本では夏がホラーシーズンなのでしょうか?「ゾワっとして涼しくなるから」という理由ではない、明確なきっかけがあったのです。
欧米では、ハロウィンのある秋がホラーシーズンだといいます。日本では、怖い映画が夏に公開されることもあり、「夏がホラーシーズン」となっています。
その理由は、「歌舞伎のオフシーズンをなくしたかったから」です。
日本の妖怪を研究している國學院大學の飯倉義之教授(民俗学)によりますと、真夏の怪談話と歌舞伎は切っても切り離せない関係があるそうです。
歌舞伎といえば、古くから続く日本のエンターテインメントですが、江戸時代は真夏になると、お客さんが激減していたといいます。
その理由は「暑すぎたから」です。この暑さは、お客さんや役者にとって地獄だったのです。
クーラーのない時代ですので、いくら歌舞伎が大人気とはいえ、芝居小屋に多くの人が集まると蒸し風呂状態になります。
それは、演ずる役者にとっても同じことです。歌舞伎特有の豪華な衣装は、ただでさえ分厚くて重い。そのうえ、かつらまでかぶるので、真夏の興行はとくに重労働だったのです。
そうなると、花形の役者は真夏に休みをとり、二番手、三番手の役者も涼しい地方に巡業に行きます。そうなると、お客さんの足も遠のきます。
こうした負の連鎖から、真夏の歌舞伎はオフシーズンとなっていたというわけです。
しかし、生活が懸かっていたため、暑さに負けて収益をあきらめるわけにはいきません。
ですが、人気役者は休みをとったり地方に行ったりしていたため、残されたのは未熟な役者だけでした。
そんな状況でも、お客さんを楽しませるために考え抜き、たどり着いたのが「怪談話」だったのです。