長崎市長「私たちは危機的事態に直面」ロシアや中東での武力紛争拡大に懸念 日本政府にも要請

AI要約

長崎市で行われた平和祈念式典で、鈴木市長が平和宣言を行った。イスラエルを招待しない判断をした市長は、核兵器廃絶や平和への道を訴えた。

被爆者の詩人の詩を引用し、核保有国や日本政府に核兵器廃絶への協力を求める内容。岸田文雄首相の表情も報じられた。

不測の事態リスクを懸念して、イスラエルを不招待とした市側により、G7とEUの駐日大使は欠席した。

 米国による長崎への原爆投下から79年となった9日、長崎市松山町の平和公園で「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が営まれ、鈴木史朗市長が「長崎平和宣言」を行った。

 パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘を続けるイスラエルを式典に招待しない判断をした鈴木市長は、23歳で被爆し、原爆症と闘いながらも原爆の悲惨さを訴えた長崎の詩人・福田須磨子さんが記した詩を読み上げた上で、「ロシアのウクライナ侵攻に終わりが見えず、中東での武力紛争の拡大が懸念される中、これまで守られてきた重要な規範が失われるかもしれない。私たちはそんな危機的な事態に直面している」と指摘。イスラエルの行為には直接触れなかったが、ロシアのウクライナ侵攻に言及しながら、中東での武力紛争拡大に強い懸念を示した。

 平和宣言の冒頭と中盤に、23歳で被爆し、原爆症と闘いながらも原爆の悲惨さを訴えた長崎の詩人・福田須磨子さんがつづった詩を引用。福田さんが詩の最後につづったという「原爆を作る人々よ! 今こそ ためらうことなく 手の中にある一切を放棄するのだ そこに初めて 真の平和が生まれ 人間は人間としてよみがえることが出来るのだ」というフレーズとともに「核保有国と核の傘の下にいる国の指導者の皆さん。核兵器が存在するが故に、人類への脅威が一段と高まっている現実を直視し、核兵器廃絶に向け大きくかじを切るべきです。そのためにも被爆地を訪問し、被爆者の痛みと思いを一人の人間として、あなたの良心で受け止めてください」「そしてどんなに険しくても、軍拡や威嚇を選ぶのではなく、対話と外交努力により平和的な解決への道を探ることを求めます」と訴えた。

 続けて「唯一の戦争被爆国である日本の政府は、核兵器のない世界を真摯(しんし)に追求する姿勢を示すべきです。そのためにも一日も早く、核兵器禁止条約に署名・批准することを求めます」と口にした。その際、NHKの生中継には岸田文雄首相の厳しい表情が映し出された。

 今回、不測の事態が発生するリスクを懸念して、市側がイスラエルを不招待としたことを受け、日本以外の先進7カ国(G7)の6カ国と欧州連合(EU)は、駐日大使が欠席した。