中国の三峡ダムが決壊? 水量調整の放流【ファクトチェック】

AI要約

中国の三峡ダムが決壊したという誤った情報がSNSで拡散している。

実際には大雨による水量調整の放流であり、決壊はない。

記事には拡散された動画や中国南部での洪水被害に関する情報も含まれている。

中国の三峡ダムが決壊? 水量調整の放流【ファクトチェック】

中国の三峡ダムが決壊したという言説が拡散しましたが誤りです。拡散した動画は大雨による水量調整の放流で、決壊を示す情報はありません。

2024年7月18日、「中国の三峡の11ヶ所のダムが全部決壊したようです、1975年以来の大洪水が発生してる」という言説が拡散した。

投稿は2024年8月2日時点で2500件以上リポストされ、表示回数は420万回を超える。投稿について「やはりそうなりましたか」「かなり被害が出そう」というコメントの一方で「決壊の報告はありません」という指摘もある。

「三峡ダムが決壊」という情報はSNSで複数拡散され、動画つきの言説も拡散している。動画にはダムから水が勢いよく放出される様子や、水につかった車や濁流が街を流れる様子が映っている。

日本語の字幕には「容赦ない豪雨により、複数の州で広範囲にわたる洪水が発生」「7月12日現在、34の河川が警戒水域を超えた」と書かれている。

三峡ダムとは

中国の三峡ダムは世界三大河川の一つ長江上流にある。洪水対策を主な目的として建設された。総貯水容量は393億立法m(黒部ダム湖の約200個分)で、湖水面積は約1084平方km(琵琶湖の約1.7倍)、湖長は663km(ほぼ東京~姫路間)だ(国立環境研究所)。

拡散した動画には「放水」

拡散した動画の中央には「ALERTS ON」と書かれている。「ALERTS ON」でYouTube検索すると「Alerts On」というYouTubeチャンネルで同様の動画がみつかる。拡散したのはこれに日本語字幕をつけたものだ。

拡散した投稿には「決壊」と書かれているが、動画の字幕にはその文言はない。「貯水池の氾濫に直面した当局は、7月11日に3つの放水路を開いて放水を余儀なくされました」と説明している。YouTube上の元動画での説明も同様だ。

この動画は短尺の動画を多数繋げて作成されており、左下には「via china social media(中国のソーシャルメディア経由)」と書かれている。冒頭の水が放出されている動画部分を画像検索すると、AFPなどが公開しているダムからの放水の様子と似ている。

また、車が流されるシーンをGoogle画像検索すると、2024年7月に投稿されたYoutubeの動画、男性が船を運ぶシーンはXのポストが見つかった。

中国南部では実際に大雨による被害

中国南部では、6月から大雨による洪水や土砂崩れ被害が多数発生し、死者も多数出ている(NHK)。世界の雨雲の位置や勢力を確認することができるJAXAの世界の雨分布速報を確認すると、中国は6月ごろから勢力の強い雨雲が停滞し、動画に記載がある7月12日も大きな雨雲が停滞している。

中国の対外向けラジオ放送、中国国際放送は大雨の影響で7月10日に三峡ダムで今年初の放流と報じている。2024年7月11日には中国メディア人民網が三峡ダムが今年初の放流をしたと報じたが、決壊したとは書いていない。

現在の水位

三峡ダムが決壊したという言説は、中国語でも拡散しており、人民網は「フェイク」だとする記事を公開している。

三峡ダムの水位がリアルタイムで表示されるサイト长江水文网(長江水文網)を確認すると、2024年8月7日現在、水位は157メートルとなっている。

中国の長江の三峡の11ヶ所のダムが決壊したという言説が拡散したが、誤り。拡散した言説に添付された動画でも「決壊」とは言及しておらず、水位調整の放流と説明している。また、中国を含む世界の報道機関も決壊を報じていない。

検証:木山竣策

編集:古田大輔、宮本聖二、野上英文、藤森かもめ

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。