話題の「ダイエット薬」、実はあまり知られてないメリット 生活習慣病の治療パラダイムが変わっていく

AI要約

ダイエット薬の代表はGLP-1受容体作動薬であり、誤解されているがさまざまな健康上のメリットがある。

セマグルチド治療を受けた糖尿病患者は認知症やニコチン依存症のリスクが低く、腎機能低下も予防できる可能性が示唆されている。

これらの薬に対する新たな知見がもたらす健康上のメリットは大きく、今後の研究の進展が期待される。

話題の「ダイエット薬」、実はあまり知られてないメリット 生活習慣病の治療パラダイムが変わっていく

 ダイエット薬というと、日本では医療機関による安易な適応外処方が問題視され、社会問題化している。

 ダイエット薬の代表はオゼンピックやリベルサス(セマグルチド)、マンジャロ(チルゼパチド)などのGLP-1受容体作動薬に分類される薬だ。とても有用な薬なのだが、あたかも悪い薬であるかのように誤解されている方も少なくない。実際のところ、これらの薬にはどのようなメリットがあるのだろうか?  新たな知見を紹介しつつ、健康上のメリットについて解説する。

■認知機能低下を予防する効果

7月11日、オックスフォード大学は、セマグルチド治療を受けている2万人以上の患者を含む、アメリカの1億人以上の患者記録を用いた研究結果を発表。セマグルチドは他の一般的な抗糖尿病薬と比較して、認知症、うつ病、不安などの神経学的および精神医学的疾患のリスク増加とは関連がなかった。さらには、認知障害およびニコチン依存症のリスクは低かった。

 一般的に、糖尿病患者は認知症や精神疾患を発症するリスクが高い。また精神疾患のある人は糖尿病を発病するリスクが高い。さらなる研究での確認が必要だが、糖尿病患者はセマグルチドで治療を受けることで認知症やニコチン依存が予防できるならば、これは大きな意味がある。

 もちろん、糖尿病でない人がセマグルチド治療を受けることで認知症のリスクを低下できるかは不明だ。しかしながら、少なくともリスクを増加させることはないと考えてもよさそうだ。

■腎機能低下を予防する効果

 糖尿病は、糖尿病性腎症を引き起こし、腎機能を低下させ、慢性腎臓病の原因となる。日本では、腎臓の機能が低下して血液透析治療が必要となる原因の最多は糖尿病だ。

28カ国387施設が参加した臨床試験で、2型糖尿病と慢性腎臓病の両方を患う人3533人がセマグルチド群(1767人)とプラセボ群(1766人)に無作為に割り付け検証したところ、セマグルチド治療群の死亡率はプラセボ群に比べて20%低かった。また腎不全や、腎機能がもとに比べて半分以下に低下すること、腎臓や心血管が原因の死亡、のいずれかの発生率はプラセボに比べて24%低く済んだ。