なぜ日本のまちからごみ箱が消えた? IoTを活用したごみ箱「SmaGO」の広がりに期待

AI要約

日本各地のまちでごみ箱が減少している理由とその影響について

テクノロジーを活用したスマートごみ箱"SmaGO"の特徴と解決策

行政や地元の協力によるポイ捨て問題の解決策

なぜ日本のまちからごみ箱が消えた? IoTを活用したごみ箱「SmaGO」の広がりに期待

駅の中、公園、コンビニなど、長らく日本各地のまちの中から、ごみ箱が減少傾向にありました。

その理由として1995年にオウム真理教が行った地下鉄サリン事件による影響がよく指摘されますが、同年に起きた青酸ガス事件、2004年に起きたマドリード列車爆破テロ、コロナウィルスによる影響など諸説あります。

まちからごみ箱が減ったことで、ポイ捨てされるごみが増えたり、ごみ箱からごみが溢れたりするなどの問題も起きています。一方で、まちに公共のごみ箱を設置したり、ごみを回収したりするのには多額の費用がかかります。

そんな問題をテクノロジーで解消しようとしているのがIoT技術を活用したスマートごみ箱「SmaGO(スマゴ)」。その特徴は、太陽光で発電し蓄電を行い、ごみがたまると自動で圧縮。ごみの蓄積状況がオンラインで分かり、回収のタイミングを通知するだけでなく、分析も行うことができます。

――日本は他の国と比べて、公共のごみ箱の設置数が少ないという話を耳にしました。

柏村さん(以下、敬称略):そうですね。日本では公共のごみ箱がほとんどない状況です。特に先進国の中で見たときにあまりにもごみ箱の数が少なくて、日本は特異な国だと言えるでしょう。

例えば、世界の観光都市と呼ばれるようなところでは、行政のソーシャルサービスとして公共のごみ箱の設置に力を入れています。弊社の調べ(2024年時点)では、パリには約2万9,000台、ニューヨークには約2万2,000台の公共のごみ箱が設置されおり、ごみ箱の大容量化やIoT化など、ランニングコストを下げるための努力がなされています。

また観光産業を強化している韓国やシンガポールといったアジアの国においても、当たり前のソーシャルサービスとして、自治体が公共エリアにごみ箱を設置し管理をしています。

――日本のまちからごみ箱が減っている理由は諸説あるようですが、オウム真理教が起こした事件がきっかけといわれていますよね。

柏村:そうですね、1990年代前半までは、まちのところどころにごみ箱が見られました。その後、国内外でテロ事件が起こるたびに、安全確保のため公共区画でのごみ箱が撤去されていったといわれています。

最近では、まちの中からごみ箱が消えた結果、ポイ捨てや本来捨てる場所ではないところに捨ててしまうなど問題が起きています。それにより観光地や、民間施設などでごみの散乱やポイ捨てに悩まれるケースが多いと伺っています。

柏村:ただ行政側もこの問題を放置しているわけではなく、インバウンドの増大や食べ歩きという新しい文化への対応を見据え、徐々にソーシャルサービスとして、ごみ箱を改めて整備していく動きが広がりつつあります。

――一方で、ごみ箱が満杯だったとき、その周囲にごみをポイ捨てする人が増える気もします。ごみ箱を置くことで、逆に「ポイ捨てをしてもいい雰囲気」が生まれてしまうような雰囲気すら感じてしまいます……。

柏村:これは非常に難しい問題だと思いますが、確実に言えることは、多くの人はポイ捨てを好んでしているわけではありません。ごみ箱が見つからなかったり満杯だったりした際に、やむを得なく捨てているのが実態だと考えています。

ただ、そのやむを得なくしたポイ捨てが、「捨てている人もいるのか。だったら自分も捨てても大丈夫かもしれない」と、負の連鎖が起こり、ポイ捨てを助長させてしまっていることも事実です。

――では、ちゃんと捨てられるごみ箱が設置されていれば、ポイ捨てはなくなるとお考えですか?

柏村:はい。基本的にポイ捨てはしたくないはずなので、受け皿さえ用意すれば、適切な場所に捨てるということは間違いないと思っています。

その際に大切なのは、何よりもごみ箱からごみを溢れさせないこと、そして適切なごみ箱の数を把握して、適切な管理をすることです。その場所に集まってくる人の数と、消費活動の規模、つまりどれくらいのお店があって、どれくらいごみが出るのかしっかり把握するということなのですが、これまでそのようなデータを取得、分析する機会がなかったため、まだまだ手探りでごみ箱を設置することが多い印象です。

ただ、私たちが提供するスマートごみ箱「SmaGO」であれば、利用回数とたまったごみ量が把握できるので、ごみ箱を溢れさせることなく、より適切な設置箇所と台数を見極めるためにもご活用いただけます。

――行政としては、ごみ箱が減りポイ捨てが増えていることを、問題と捉えてはいるのでしょうか?

柏村:そのように捉えてはいる自治体も増えてきていると思いますが、当然自治体の予算や人手も限られており、自治体だけに任せて解決をするのは難しいという現実もあります。

地元の人々や地元企業等の協力で清掃活動などを行い、ポイ捨て問題を解決していくのも良いと思いますが、ボランティアによる清掃も簡単ではないので、効率的にごみを集積できる「SmaGO」のようなごみ箱を、行政・市民・民間の連携で設置・運営することも一つの選択肢と考えていただきたいです。

――一般的にまちにごみ箱を設置するコストというのは、どれくらいかかるのでしょうか?

柏村:一般的にはごみ箱の設置に伴って、1.初期費用(ごみ箱本体)、2.回収清掃費用(毎月発生)、3.ごみの処理費用(毎月発生)、の3つの費用が発生するものです。

ちなみに、一般的な屋外用のごみ箱1台は20万円前後といわれています。回収と清掃に関しては、その頻度・範囲によって変わってきますが、場所によっては高額となるケースも散見されます。