ねぶた祭、祇園祭…夏祭りに変化の足音「伝統だけでなく環境も守る」

AI要約

日立連合ねぶた委員会のねぶたの台上げが行われ、今年のテーマや再生エネルギーを活用した取り組みが紹介された。

電球を2000個搭載したねぶたは、蓄電池を利用した脱炭素ねぶたとして2022年に初運行された。

COVID-19禍で中止された祭りを踏まえ、脱炭素化への取り組みや環境配慮が進められている。

ねぶた祭、祇園祭…夏祭りに変化の足音「伝統だけでなく環境も守る」

7月22日午後3時、日立連合ねぶた委員会(以下日立連合)のねぶたの台上げが始まった。30度を超える酷暑の下、3つに分かれた人形の灯篭を約50人がかついで台車に載せていく。ねぶた師の北村蓮明さんの指示で位置を細かく調整し、組み上がった時には夕日が差していた。

日立連合の今年のねぶたは、相撲の名人として知られる平安時代の武将・河津三郎祐泰と、祐泰に由来する決まり手「河津掛け」をテーマにしている。同委員会の川内英明委員長によると、青森県出身の力士・尊富士が活躍していることや、相撲の四股(しこ)踏みが大地を鎮める神事から発したとされていることから、被災地の速やかな復興への思いも込めた。

青森ねぶた祭は8月2日から7日に開催され、観光客にとってはねぶた運行がクライマックスとなる。一方、春からねぶた小屋で制作を続けて来たねぶた師にとっては、台上げが総仕上げだという。日が落ちると灯篭の点灯式が行われ、小さな打ち上げが始まった。

台車から灯篭の内部をのぞくと、電球が張り巡らされていた。川内さんによるとその数は2000個に上る。台車には重たそうな蓄電池がずらりと並ぶ。1965年から祭りに参加する日立連合は2022年、再生エネルギーをためた蓄電池を電源にする「脱炭素ねぶた」を初めて運行した。

ねぶた祭をはじめ、日本の夏祭りの多くはコロナ禍で2020、2021年に開催が自粛された。その間に日本政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、カーボンニュートラルを実現する」と宣言した。企業の脱炭素の取り組みが加速する中、川内さんは「祭りも脱炭素に向けて何かできないか」と検討を始めた。

従来は台車にディーゼル発電機を搭載し、灯篭の電球に電力を供給していたが、太陽光など自然エネルギーで発電した電気を蓄電器にためて給電できれば、二酸化炭素(CO2)排出量を約170キロ削減できると試算した。

川内さんは「環境だけでなく、曳き手(ひきて)の負担も軽減したかった」とも語る。ねぶたの総重量は4トンにも上り、ディーゼル発電機だけで1トンを要する。2022年に搭載した蓄電池の総重量は400キロ。2024年は340キロまで軽量化できた。