日本学術会議の法人化に向け会員選考方法を議論 政府有識者懇、議論の長期化に懸念も

AI要約

政府は日本学術会議の法人化に向けた議論を進め、会員選考や組織の在り方について議論を重ねている。

有識者懇が作業部会を設置し、透明性やガバナンスを重視した制度設計案を取りまとめることを報告した。

議論の長期化が懸念されており、年内に条文案作成に取り掛かる必要性が指摘されている。

日本学術会議の法人化に向け会員選考方法を議論 政府有識者懇、議論の長期化に懸念も

政府は29日、日本学術会議の法人化に向けた12回目の有識者懇談会(座長・岸輝雄東大名誉教授)を開催し、法人化後の会員選考方法などを議論した。組織と会員選考の在り方をそれぞれ議論する2つの作業部会がまとめた方向性も報告された。政府は来年の通常国会への改正法案提出を目指すが、議論の長期化を懸念する声も上がっている。

作業部会はこの日、学術会議が法律で特別な地位・権限を負託され国費による支援を受けているとし、国民が納得できる方法での会員選考や、高い透明性とガバナンス(組織統治)を担保する必要性があると報告した。有識者懇のメンバーからは「おおむね異論はなかった」(岸氏)。

■4月に2つの作業部会を設置

有識者懇は昨年12月に学術会議を現行の「国の特別機関」から法人化することが望ましいとする報告書を取りまとめた。今年4月に2つの作業部会を有識者懇の下に設置し、法制化に向けて具体的な制度設計の議論を進めている。

学術会議には年間10億円の国の予算が投じられているが、現職会員の推薦で新会員が任命されるなど不透明性が指摘されてきた。

昨年の通常国会では会員選考に第三者を関与させる学術会議法改正案の提出を目指したが、学術会議側の反発を受けて断念した。学術会議側の要望で有識者懇を設置し、議論を重ねている。法人化した後も国が必要な財政援助を行うため、会員選考の透明性や組織のガバナンスを中心に、有識者懇が制度設計案を取りまとめる。まとまり次第、政府は具体的な条文案の作成に着手する。

■「今年中に意見とりまとめ」

岸氏は29日、取りまとめの時期について記者団に「私個人としては今年中には意見をまとめ上げたい。妥協ではないが譲れるところを譲らない限り、いいものは出てこない」と議論の長期化に懸念を示した。

自民党の学術会議に関するプロジェクトチームのメンバーの一人は「遅くとも年内には条文案作成に着手しなければダメだ。法人化の方向が決まっている以上、ずるずる引き延ばす話ではない」と語った。(永井大輔)