「小川(智大)選手のコメントは何かにつながる」男子バレー柳田将洋32歳が“落選に関する取材”を断らない理由「選ばれなくても誇りを持って」

AI要約

パリ五輪に向かうバレーボール男子日本代表のメンバー選考について、前キャプテン柳田将洋は建設的な議論を重視し、選手はリスペクトされるべきだと語る。

落選経験から選手の気持ちを考え、同じ境遇の選手に誇りや自信を持たせたいという思いを示し、注目されることの重要性を訴える。

東京五輪で主将だった柳田の落選についても触れ、選手たちの心境を知るきっかけになる注目されることの意義を強調する。

「小川(智大)選手のコメントは何かにつながる」男子バレー柳田将洋32歳が“落選に関する取材”を断らない理由「選ばれなくても誇りを持って」

52年ぶりのメダル獲得を懸け、パリ五輪に臨むバレーボール男子日本代表。前キャプテン柳田将洋(32歳/東京グレートベアーズ)に日本代表の強さの理由や、選手選考への想い、現キャプテン石川祐希について語ってもらった。【NumberWebインタビュー全3回の2回目】

 パリ五輪に向かうバレーボール男子日本代表は、その人気と期待の高さゆえにメンバー選考もおおいに注目された。

 特にアウトサイドヒッターや、リベロの山本智大(大阪ブルテオン)、小川智大(ジェイテクトSTINGS愛知)の1枠を巡る争いは注目され、メンバー発表後は反響も大きかった。

 柳田将洋は、「誹謗中傷は言語道断。あくまでも建設的な議論が展開されるなら」という前提ではあるが、メンバー選考が話題になること自体は「議論が生まれたほうが僕は面白いと思うし、今はそれが生まれるべき場所でもあると思う」と肯定的に捉える。

「落選したとか、選ばれたとか、そういうところももちろん大事ですけど、それよりもなんでそういう選考になったのか、どういうバレーをしたいからなのか、という話題にしっかりフォーカスが行くんだったら、競技のレベルも含めて上がるんじゃないかなと思います。

 僕はバスケも好きなんですけど、選手選考の際のコンセプトだったり、『こういうバスケットボールがしたいから』といった(トム・)ホーバス監督のコメントから読みます。それは(フィリップ・)ブラン監督もおっしゃっていましたけど、そこをもとに、日本はどういうバレーをしたいんだという話を展開できればいいことだと思う。

 でも、この人が落ちた、こっちのほうがよかったのに、ああすればよかったのに、というのは、はっきり言って何も生まれない議論だと思う。どちらの選手に対してもリスペクトしてほしい。僕も当時そうでしたけど、選手自身は、プロなので、おそらくみんな納得していると思います。だからそこは温かく見守っていただきつつ、選ばれた選手でどう戦っていくかにフォーカスを置いてほしいという思いはあります」

 2021年の東京五輪で落選を経験した柳田の言葉は重い。

 メンバー選考が大きな話題になるのは、注目される競技になったということの裏返しでもある。

「それ(選考)が注目されること自体はいいことだと思う。サッカーなどもそうですけど、やっぱり世間の注目度が高いほど、ディテールにまで目が行くので。バレーのパリ五輪の当落線の話もそうですし、落選した小川選手のコメントが記事になっていたりとか。それは、何かにつながることだと思う。

 僕もそうでしたけど、どうしても毎回、オリンピックの出場権を獲得した後には、当落というのは存在して、必ず落ちる選手がいる。そういった同じ境遇に立った選手にとって、(過去に同じ経験をした選手の話は)何か素材になるものだと思うんです。僕もそうですし、小川選手だったり、(エバデダン・)ラリー選手、富田(将馬)選手もそうかもしれない。そういった選手の思いというのは、今後の日本のバレーボールにしっかりつないでいってもらって……。

 同じ境遇の選手が、オリンピック(の選考)に落ちたからって、バレーボールをやめるなんてことはもちろん起こってほしくないわけで。しっかりとね、そこにも誇りを持ってというか、自信を持って、今後もバレーを続けてもらうためにも、注目されることによって活字化されて、皆さんやこれからの選手の目に留まって欲しいというのはあります。

 選手は、落ちた時の気持ちはつらいと思います。なかなかコメントはしづらいでしょうけど、絶対そういうものって、ファンの人の目にも、競技をしている若い選手の目にも留まる。今の日本代表がどういった状況で、選手はどういう心境でバレーをしていて、どれほどのものを懸けてやっているのかを知るきっかけにもなるので、非常に重要なことだと思います」

 東京五輪当時、前年まで主将を務めていた柳田の落選は衝撃的で、大きな話題となった。その中で幾度もその落選に関する取材に答えてきたが、この先自分と同じ境遇になる選手のためにもと、そこまで考えていたとは……。