9歳でゲームを作った「天才少年」が都知事選出馬を決めた「野望の正体」【安野たかひろ氏独占インタビュー】

AI要約

幼少期からパソコンに触れ、AIを使って政治を変えたいという野望を持つ天才少年が都知事選に挑戦する

安野たかひろ氏は15万票を獲得し注目を集めるも落選。AIエンジニアとして活躍し、デジタル民主主義を実現したいと考えている

AIを使った民意の収集と政策の分析が可能となり、古い対立軸に変わる新たな政治を目指して都知事選に出馬した経緯

9歳でゲームを作った「天才少年」が都知事選出馬を決めた「野望の正体」【安野たかひろ氏独占インタビュー】

幼少期よりパソコンに触れ、ゲームやウェブサービスを作ることを喜びとしていた天才少年は、いつしか政治の世界に関心を持つ。「AIを使えば政治は変わる」そんな確信が彼を政界へと駆り立てた。

小池百合子の粘り腰での当選、石丸旋風、蓮舫まさかの3位……など話題に事欠かなかった都知事選だが、選挙が終わった後に一気に注目を集めた意外な候補者がいた。安野たかひろ氏。初めての政界挑戦で、支持基盤もないのに15万票を獲得した33歳の若きエンジニアは、なぜ都知事を目指したのか。意外な「野望」を本誌に明かした。

「率直に言えば悔しいという気持ちです。選挙期間中はテレビでの露出がほとんどなかったので、選挙後にこうして取り上げてもらうのは率直にありがたく思う一方、選挙中にもう少し注目を集めていれば……という思いはあります」

こう都知事選を振り返る安野氏。東大卒のAIエンジニアで、AI関連の会社を2社創業したほか、SF作家としても活動するなど異色の経歴の持ち主だ。

「テクノロジーで政治を変える」という真新しい公約を掲げたことで注目を集めたが、その原点は9歳の頃にさかのぼる。

「小さな頃から機械に興味があったので、自然と親が買ってきたパソコンを触るようになったんです。まずはパソコンでなにができるのか、それを確かめるために、スタートメニューの上から順にすべてのソフトを開いていきました」

安野少年がなかでも感動したのがExcelだった。

「Excelは数式を入力すれば、計算から分析までなんでもできる。ほかのソフトにはない圧倒的な自由度があり、ある種の万能感を覚えました。そこからこのソフトにのめりこんで、Excelで自作のゲームまで作りました」

父はサラリーマン、母は専業主婦というごく普通の家庭で育った安野氏は、特別な教育を受けたわけではないというが、勉強は抜群にできた。小学5年生で塾に入ると、メキメキと偏差値を上げ、東大合格者数全国1位の開成中学校・高等学校に入学する。

その後、東京大学工学部に進学した安野氏は、在学中にAIの研究に従事。卒業後はボストン・コンサルティング・グループに就職し、25歳の時に独立してAI関連のベンチャー企業を2社起こした。そんな安野氏が、今回の都知事選出馬を決めたのはなぜか。

それは、テクノロジーを活用して民意を政治に反映させる「デジタル民主主義」を実現させるという”野望”があったからにほかならない。

「たとえば今回の都知事選では、小池vs.蓮舫という対立構造が作られた。これは、政治的イデオロギーが基本となって、左右に分かれた対立軸になっていました。しかし、こうした対立軸は、本当に都民の生活とつながっていたのでしょうか。対立型の古い政治に変革をもたらし、本当に有権者が望む政策が反映される政治に変えたいと思ったんです」

そんなデジタル民主主義の実現に向けて、必要不可欠なものがAIだった。プログラミング言語ではなく、人間の言葉を直接理解できる「ChatGPT」のようなAIを駆使すれば、大量の民意を収集し、大規模に分析することが容易にできる時代になった。この変化が、出馬を後押ししたという。

後編記事「開成東大卒の「天才AIエンジニア」が「日本の政治はAIで変えられる」と考える理由【安野たかひろ氏独占インタビュー】」に続く。

「週刊現代」2024年8月3日号より