「牛のげっぷ」抑制で温室効果ガス削減目指す<シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

AI要約

牛のげっぷは温室効果ガスの一つの原因であり、地元の食品残渣を活用した餌で抑制される取り組みが行われている。

牛の胃内で行われる微生物による発酵プロセスがメタンガスを生成し、その抑制が研究されている。

おからを含む発酵飼料を提供することで、温室効果ガス排出を27%減少させる取り組みが行われている。

「牛のげっぷ」抑制で温室効果ガス削減目指す<シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】

「牛のげっぷ」は温室効果ガスの発生源の一つ。餌を変えることで抑制する取り組みが本格化しつつある。「シリーズSDGsの実践者たち」の第34回。

■メタンガスを排出する「牛のげっぷ」

全世界で排出される温室効果ガスの中で、大半を占めるのが二酸化炭素。その次に多いのがメタンガスで、温室効果ガス総排出量の約5%を占めると推定されている。メタンの主な排出理由の一つが、牛のげっぷだ。

牛には胃が4つあり、1つ目と2つ目の胃の中には微生物がいる。これらの微生物が食べた飼料を分解し、発酵させて、エネルギー源として使える形に変えていく。この過程で二酸化炭素や水素などのガスが発生し、水素は胃の中にいるメタン生成古細菌という微生物に利用されてメタンガスとなり、呼気と一緒に出てくる仕組みになっている。

牛のげっぷに含まれるメタンガスの抑制は、国内の大学や研究機関などで研究中だ。その中で、神奈川県畜産技術センターでは、地元にあるものを餌にすることでメタンガスの抑制に取り組んでいる。

おからの発酵飼料で温室効果ガス約27%減

昭和33年に建築された牛舎の中で、試験的に飼育されている肥育牛。生後12か月と生後19か月の2頭の牛の餌には、牧草や配合飼料などと一緒に、県内の食品会社から廃棄物として出てきた「豆腐のかす」であるおからが加えられていた。

畜産技術センターでは、おからを50%含む発酵飼料を肥育牛に与えている。おからのほかに、配合飼料、小麦の表皮部分であるふすまなどを混合して密閉容器に詰め込み、10日ほどかけて乳酸発酵させる。この方法で1か月程度保存が可能な発酵飼料ができる。

おからの発酵飼料は、地元から出る食品残渣を活用した餌であるエコフィードとして、昔から畜産技術センターで作られてきたものだ。

そこに地球温暖化防止の観点が入ったのは、2年前に試験研究構想を見直してから。製品の生産段階における環境負荷を定量的に評価して「見える化」するLCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて、おから発酵飼料の原材料の生産を流通している配合飼料の購入と比べてみると、温室効果ガス排出量がCO2換算で約27%減少していることがわかった。