自動物流道路、新秦野-新御殿場間で9年度までに社会実験 10年後実現へコストなど課題

AI要約

政府は自動物流道路の社会実験を令和9年度に開始することを決定した。新東名高速道路の一部区間を想定し、将来的に大都市近郊での導入を目指す。

自動物流道路は専用路を使い、カートが無人で自動走行して荷物を運ぶ仕組みを導入する。東京-大阪間での導入を目指している。

工事費用の課題や民間資金の活用を前提とする政府の取り組みが今後の焦点となる。

自動物流道路、新秦野-新御殿場間で9年度までに社会実験 10年後実現へコストなど課題

政府は25日、高速道路の空きスペースなどを利用して荷物を自動運搬する「自動物流道路」について、令和9年度までに社会実験を開始することを決めた。同年度に開通する新東名高速道路の新秦野(神奈川県)-新御殿場(静岡県)間を想定する。東京-大阪間での導入を念頭に、10年後をめどに渋滞が頻発する大都市近郊の一部区間での実装を目指す。増大する物流需要やトラック運転手不足など、物流の構造的な問題に対応する。

■専用路をカートが無人走行

「既存の物流インフラを活用しつつ、物流の常識を根本から革新していく取り組みが不可欠だ」。岸田文雄首相は同日開催された物流革新に関する関係閣僚会議で自動物流道路の整備への期待を語った。2月に設置された有識者会議で検討が進められ、中間取りまとめが報告された。

自動物流道路は高速道路の中央分離帯や路肩、地下の空間などに専用レーンを設置し、カートが無人で自動走行して荷物を運ぶ仕組みを想定する。まずは実験線で実証を重ね、10年後をめどに小規模な改良で設置できる先行ルートに実装。将来的には、物流量が特に大きい東京-大阪間での導入につなげていく構想だ。

■巨額の工事費がネック

今後は、荷降ろしなどを効率的に行えるようカートの大きさや形など荷物の規格を定めるほか、トラックや貨物列車から円滑に荷物の移し替えができる態勢づくりなども進める。

国土交通省は東京-大阪間に自動物流道路が設置されれば、1日あたりトラック約1万2千~3万5千台分の交通量を削減できると試算する。運転手に換算すると、約1万~2万5千人に相当する。物流業界では4月に運転手の残業規制が強化され、輸送能力が12年度には元年度比で34%不足するとの試算もあり、自動物流道路への期待は大きい。

導入に向け、海外の先行事例を参考にする。スイスでは主要都市間を結ぶ地下トンネルに自動運送カートを走行させる計画が進む。

最大の課題はコストだ。国交省の試算では、工事費用が地上部のレーンの場合に10キロメートルあたり254億円、地下トンネルを整備する場合は70億~800億円かかる。東京-大阪間で単純計算すると、最大で4兆円程度となる見通し。政府は「民間の活力を最大限活用する」として、工事費用の捻出には民間資金の活用を前提とする。幅広い企業が参加する組織づくりといったビジネスモデルの確立や官民連携の手法などが今後の焦点になる。(織田淳嗣 万福博之)