立民・国民の衆院選連携、「原発ゼロ」が火種に 民主党時代の〝パンドラの箱〟再び

AI要約

立憲民主と国民民主両党間で「原発ゼロ」の目標を巡る対立が浮上している。両党は次期衆院選での連携を模索中だが、エネルギー政策をめぐる意見の相違が露呈している。

国民民主は原発関連産業従事者を擁する労働組合の影響も考慮し、「原発ゼロ」目標について疑問を投げかけている。一方、立憲民主はすぐの原発停止を主張していないとしつつも、合意形成が難航している。

両党の政策不一致は発足以来続いており、議員間での原発問題を巡る論争は過去の党内対立を彷彿とさせる。衆院選に向けた協力が難航する中、エネルギー政策が争点となっている。

立民・国民の衆院選連携、「原発ゼロ」が火種に 民主党時代の〝パンドラの箱〟再び

次期衆院選での連携を模索する立憲民主、国民民主両党間で、立民が綱領に明記している「原発ゼロ」の目標が対立の火種になりつつある。国民民主は、支援を受ける連合傘下の産業別労働組合(産別)のうち、原発関連産業従事者を擁する電機連合や電力総連の立場も踏まえ、綱領の文言への批判を重ねる。これに対し立民は、原発の即時停止を主張しているわけではないと反論しており、着地点は見いだせていない。

■エネルギー政策で議論かみ合わず

立民の泉健太、国民民主の玉木雄一郎両代表は22日夜、連合の芳野友子会長を交えて東京都内で会食し、衆院選での協力のあり方などに関して意見交換した。

話題の一つは衆院選に向けた「基本政策協議」だった。国民民主は、政権選択選挙である衆院選での連携には、憲法や安全保障、原発をはじめとするエネルギー政策に関する一致が不可欠だと訴えている。玉木氏は会食の際も「国家の運営に関わる基本政策についての議論は必要ではないか」と重ねて泉氏に求めた。

にわかに「原発ゼロ」が対立点として浮上したのは先週のことだ。玉木氏は18日の記者会見で、原発関連産業に携わる組合員の存在に触れた上で「現実的に真剣に考えてもらいたい」と立民への苦言を口にした。

これに対し泉氏は19日の会見で「新たな電源が安定して供給されるまでは、従来のさまざまな発電は利活用していく。『政権を取ったらすぐ原発を停止する』という話はしていない」と反論し、国民民主との合意は可能との認識を示した。

■論争は往年の党内対立劇の再現か

対立の底流にあるのは、両党の発足時から尾を引く政策の不一致だ。国民民主は令和2年9月、旧立憲民主党と旧国民民主党による合流新党として現在の立民が誕生した際、参加を見送った議員が結成した。立民に加わることを避けた理由の一つは原発政策だった。

玉木氏は23日の会見で、電力業界に関係する議員が「原発ゼロ」の目標に忌避感を抱いてきた経緯を改めて説明し「立民の綱領ではともにできないという声もあって、国民民主という政党を作った」と強調した。また、立民に対して「現実的で中道的な、保守層も安心して応援できるような立ち位置になることは、政権を担おうとするのであれば当然だ」と注文を付けた。

ただ、政党にとって「背骨」ともいえる綱領の見直しを迫られた立民側には、「政策のすり合わせの域を超えた要求だ」(閣僚経験者)との反発も広がる。

両党の源流の民主党時代、議員間で賛否両論が交錯していた原発問題は、議論に踏み込むと政局の火種を生む「パンドラの箱」ともいえる政策課題だった。衆院選を見据えた「原発ゼロ」論争は、往年の党内対立劇の再現のようにも映る。(松本学)