「糞虫を約80種類収集」「退職金など1000万円を博物館設立」「この道45年」 “フン虫王子”中村圭一さんの糞虫に魅せられた人生

AI要約

中村圭一さんが糞虫に魅せられ、ならまち糞虫館を設立するまでの人生に迫る。

中村さんは幼少期から昆虫を愛し、友達と奈良公園で糞虫を採集する日々を送る。

同好会を結成し、糞虫の観察や実験を通じて昆虫の面白さを追求していた。

「糞虫を約80種類収集」「退職金など1000万円を博物館設立」「この道45年」 “フン虫王子”中村圭一さんの糞虫に魅せられた人生

前回の記事では、「観光名所として有名な奈良公園には1300頭ものシカがいるにもかかわらず、フンだらけにならない理由」について取り上げた。

 その答えは「フンを食べるコガネムシの仲間」である糞虫の働きによってフンが分解され、土に還る手助けをしているからだということを、ならまち糞虫館の館長・中村圭一(なかむら・けいいち)さんに教えていただいた。

 そこで今回は、中村さんがいかにして糞虫に魅せられ、そしてならまち糞虫館を設立するに至ったのか。そんな中村さんの人生をのぞかせていただいた。

■寝ても覚めても糞虫観察の日々

 小さい頃から生き物が好きだった中村さん。糞虫に限らず生き物全般が好きであり、カブトムシやザリガニを採りに行くのはもちろん、デパートに行った際も、生き物やペットコーナーにずっといるような少年だった。

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 「世の昆虫少年の例に漏れず、夜寝る前は母が『ファーブル昆虫記』を読んでくれていました。でも当時は本よりも、とにかく生きた虫が大好きでした。餌を食べるかと思ったら食べなかったりと、予測不能な動きをするところが面白いんですよね。

 生駒山に昆虫採集に連れて行ってくれた父の信条は『好きなことを一生懸命やればいい』というもので、その言葉通りに過ごしていました」

 そんな中村さんに大きな変化が訪れたのは、中学生のときのこと。

 夏休みの宿題で、友達が提出した見事な昆虫標本を見て衝撃を受けた。綺麗な瑠璃色をした昆虫に魅了され、それがルリセンチコガネという糞虫であることを知った。そしてなんとこの魅力的な糞虫は、家の近くの奈良公園にたくさん生息しているという。

 それ以降、昆虫標本を作成した友達が師匠ともいうべき存在となり、2人で奈良公園に行っては糞虫を採集し続けた。

 「糞虫って図鑑にも載ってないことが多かったですし、当時は飼育方法が確立されていませんでした。なので、どういう種類の糞虫がどのようなフンを好むのかなど、試行錯誤するのが面白かったんです」

 師匠とともに生き物好きの同級生を集めて昆虫同好会を結成。それぞれに贔屓の昆虫がいたが、奈良公園に行っては糞虫を観察して、さまざまな環境で実験も行った。