ポストコロナと戦争、山の生活を現代アートで 越後妻有の第9回「大地の芸術祭」が開幕

AI要約

新潟県越後妻有地域で開催中の国際芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」は、41の国と地域から275組の作家による311点の展示があり、ウクライナの現代美術作家の作品に注目が集まっている。

会期は11月10日までで、ロシアの侵攻が続くウクライナの作品を紹介するウクライナウイークも開催されている。

会場には英国の彫刻家アントニー・ゴームリーなどの作品が展示され、新作として、木球を用いたインスタレーションなどが登場している。

ポストコロナと戦争、山の生活を現代アートで 越後妻有の第9回「大地の芸術祭」が開幕

 日本有数の豪雪地帯である新潟県越後妻有地域(十日町市、津南町)を舞台にした国際芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」(実行委員会など主催)が13日に開幕した。

 11月10日までの全87日間開催される。

 地域の魅力をアートや文化、食を介して発信する地域芸術祭で、2000年に始まり、今回が第9回。3年に1度の開催だが、前回は新型コロナウイルスの影響で1年延期され、人の集中を避けるため会期を半年間に拡大して22年に実施された。

 今回は41の国と地域から275組の作家による311点(うち新作・新展開85点)を展示。ロシアの侵攻が続くウクライナの現代美術を代表する作家の作品などにスポットを当てた。今月21日までウクライナウイークとして、アートフィルムや伝統的な料理なども紹介する。

 代表的な新作では、十日町市の神社境内に展示された英国の彫刻家アントニー・ゴームリーの「MAN ROCK V」が目を引く。社(やしろ)に据えられた石に、抱きしめる人の身体が刻まれており、人類と地球との依存関係や環境をつくる者としての人間の役割を問い掛けている。

 同市の奴奈川キャンパス(旧奴奈川小学校)には、鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志の「木湯」などを展示。桜の木から作った木球約4万個を大きな湯船の中に敷き詰めて温泉をイメージし、子どもが木と遊ぶ空間を創出した。

 同学部教授の鞍掛氏は「コロナ禍でいろいろなものと触れ合う機会がなくなっていた。子どもたちが五感を通じて素材に触れ、人とも交わる場所になれば」と語った。

 津南町の東京電力信濃川発電所連絡水槽には、ウクライナのニキータ・カダンの「別の場所から来た物」を展示。ロケットなどをイメージした金属製オブジェで、子どもが遊ぶ公園を表現しているが、離れた所から見ることしかできず、もはや手の届かない幸福な空間であることを示唆している。

 カダン氏は「こうした遊具は、今の戦争でロシアがキーウに落としているミサイルに似ていると思う。多くのものを失わせ、変えてしまった」と話した。

 越後妻有の最深部で秘境と呼ばれ、長野県にまたがる津南町秋山郷(あきやまごう)。21年閉校の旧小学校を活用した「アケヤマ―秋山郷立大赤沢小学校」では、「人間の生活の力を再び手に入れるための学校」として会場を構成した。マタギや民間信仰など、山に生かされてきた人々とその暮らしを、複合的な展示でアートの視点からひもとく。

 開幕前の企画発表会で、実行委員長の関口芳史・十日町市長は「芸術祭は多くの人に支えられ、成り立っている。第8回で学びを得て進むが、赤ちゃんのように大事にしたい」と述べた。

 総合ディレクターの北川フラム氏は「人間の幸福にとって厳しいのは、戦争と疫病と飢え。今、日本(の力)は落ち、地域は都市に人が流れ、農業は弱くなっている。芸術祭に来た人を全力でもてなせば、来た人も喜び、もてなす側もうれしくなる。美術をきっかけに幸せを感じ、元気になる。それが(目指すべき)『歓待する美術』だ」と語った。