知事疑惑の告発者死亡、消極論も上がる百条委の行方 専門家は「解明しないと禍根残す」

AI要約

兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを文書で告発した男性が死亡し、調査特別委員会の行方が注目される。

男性の証言が予定されていた百条委が困難になったものの、真相解明のため調査継続が必要と指摘される。

内部調査の過程で男性の公用パソコンが調査されており、百条委の要求に懸念を示していた。

知事疑惑の告発者死亡、消極論も上がる百条委の行方 専門家は「解明しないと禍根残す」

兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを文書で告発した元県西播磨県民局長の男性(60)が死亡したことで、文書内容を調査する県議会の調査特別委員会(百条委員会)の行方が注目されている。次回会合で証言予定だった告発者が亡くなり、調査は困難になったとの声も上がるが、専門家は「真相解明しなければ禍根を残す」と調査継続の必要性を指摘する。

「職員に不安が広がっており、少し様子をみるべきではないか」。男性の死が明らかになった8日、県議の一人は、百条委での調査は慎重にすべきだとの見解を示した。

兵庫県議会で51年ぶりとなる百条委。発端となったのは3月の会見だった。「噓八百」「公務員として失格」。斎藤氏は強い口調で男性を非難し、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。

だが、知事の部下にあたる人事課職員らによる調査に、県議会から「中立性が担保されていない」との批判が噴出。全会一致で第三者による再調査を斎藤氏に要請したのに続き、6月には知事選で斎藤氏を推薦した「知事与党」の自民などの提案で百条委が設置された。

百条委では、証人出頭や資料提出の拒否などに刑事罰の規定がある。強力な権限の下で疑惑が調査されることとなり、今月19日には男性の証人喚問が予定されていた。

関係者によると、男性は証言に前向きだった。ただ、県の内部調査の過程で自身の公用パソコンが調べられており、百条委の一部委員から、告発とは無関係な情報も含めて提出を求められていることに懸念を示していたという。

「プライバシーに配慮してほしい」。今月初めごろ、男性は百条委委員長にこう伝えた。亡くなったのは7日夜。翌8日午前の百条委理事会で、告発とは無関係な文書の開示はしないことが賛成多数で決まったが、このときはまだ、男性の死は公になっていなかった。

男性が亡くなったことで「告発者が亡くなって事実解明ができるのか」といった懸念も広がるが、内部告発に詳しい上智大の奥山俊宏教授は「白黒をはっきりつけなければ知事や県職員、県議会、誰にとっても禍根を残す」と指摘する。

奥山氏は文書の内容の多くが、男性がほかの職員から聞いた情報に基づいているとみられることに着目。「男性の証言がなくても調査に大きな支障はない」とみる。