じつはいま、日本企業の多くで「管理職昇進」が遅れ、「若い世代」が割を食っている…海外企業との「決定的な違い」

AI要約

日本企業特有の“昇進制度”が管理職の「罰ゲーム化」へとつながる原因の一つである。

日本の管理職は「昇進」と「昇格」の区別があり、ポストが空いていないと昇進が難しい状況が生じる。

日本の正社員は入社と同時に管理職昇進を待つリストに並び、自ら志願するのではなく押し出される形で管理職へと進む。

じつはいま、日本企業の多くで「管理職昇進」が遅れ、「若い世代」が割を食っている…海外企業との「決定的な違い」

前回記事「女性に「出世の意欲がない」のは本当か…彼女たちの昇進を阻む「罰ゲーム化した管理職」のヤバすぎる悪影響」で紹介したように、死亡率の逆転現象や、女性活躍推進を阻んだりなど、日本に深刻な影響をもたらしている管理職の「罰ゲーム化」。

なぜ、このような状況に陥ってしまったのでしょうか? 『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)では、その原因の一つに日本企業特有の“昇進制度”があると説明しています。

日本の管理職はその「入り口」、つまり管理職ポストへの昇進・昇格の仕方から特殊です。 日本では、従業員格付けの等級が上位に上がることを「昇格」と呼び、組織におけるより上位の役職・ポジションへ上がることを「昇進」と呼びます。

管理職は原則的には役職なので、「昇進」です。上位管理職へのポジション異動のみがあり、等級が無い企業も存在しますが、 それは「昇進」のみがその会社内でのキャリア上昇であることを意味します。 この「昇格」と「昇進」の区別こそ、戦前の近代官庁から受け継いだ日本企業の大きな特色です。

日本企業は伝統的に「人の能力」を基準に従業員を格付けします(職能等級と言います)。この「昇格」には、基本的に人数制限がありません。一方の「昇進」は具体的なポストへの登用になりますので、ポストが新設されるか人が入れ替わらない限り、昇進できません。

管理職の昇進では「ポストが空いていないから昇進は難しい」「上の年代で昇進待ちが多く発生している」といったことが起こります。

日本の正社員の「昇進」について説明するとき、筆者は「オプトアウト」方式と表現しています。「オプトアウト」とは、不参加や脱退という意味です。原則的には参加が決められており、退出したり、抜けるときだけ意思表示を求める方式です。

日本の企業の多くは、未経験者の「一括入社」の後、新入社員に一律的で平等な訓練を施します。東大だろうが無名大学だろうが、入社後すぐのタイミングでは育成内容に差がほとんどつきません。正社員として入社さえしてしまえば、ほとんどの人が「未来の幹部層候補」として扱われるのが日本のキャリアの大きな特徴です。

「未来の幹部候補」の数が多いがゆえに、その選抜はゆっくりしたものになります。多くの人を参加させ、長くて広いトーナメント表を広げれば、決勝や準決勝までの期間が長くなります。その長い期間を使って会社はジョブ・ローテーションを行います。

すると、どの部署に行っても成果を出す「自然に目立ってくる優秀な人」が登場し、その人たちが適齢期になったタイミングでマネジャーになっていきます。そのマネジャーへの登用も、公募で本人たちに手を挙げさせるのではなく、上司による推薦や人事の判断(評価会議)による、会社側からの打診が多数です。従業員は、管理職への「昇進辞令」や上司からの「推薦するよ」という判断を受け取る側です。

つまり日本の正社員は、入社と同時に「自らの意思とは関係なく」、管理職昇進を待つ長いウェイティングリストに並び、手を挙げて登用されるのではなく、押し出されるように管理職やその登用試験を打診されていくのです。

年功序列の色合いが濃い企業では、30代後半くらいから「管理職候補」として周囲からも見られ始めます。「そろそろ管理職試験を受けてみてはどうか」といった声もかかりはじめます。

それらに対し(家庭の事情や自身の健康状態などで)自ら時短勤務を選んだり、昇進を断るときにだけ「私は管理職を目指さない」という意思の表明が必要になるわけです。これが、日本の昇進が「オプトアウト」方式であるという所以です。