「臭いものに蓋をしただけ」政治資金規正法や所得税法違反の時効は5年…「10年前の領収書」の価値

AI要約

改正政治資金規正法は実質的には改悪だと指摘されている。裏金事件の検証や責任追及が不十分で、ザル法と呼ばれる改正法が成立した。

議員の責任逃れや組織的な脱税に対処するための改正は不十分であり、法改正自体が問題の根本に対処していない。改正法による罰則の強化も、実効性に欠ける部分があり、裏金問題の根本解決には至っていない。

政治資金パーティーや裏金収受に対する規制が緩い一方、個人や企業に対する規制は厳しい。改正法が本質的な問題に対処できないまま成立したことが懸念される。

「臭いものに蓋をしただけ」政治資金規正法や所得税法違反の時効は5年…「10年前の領収書」の価値

「改正と言っていますが、実態は改悪です」

自民党派閥の裏金事件を受けて先月19日に成立した改正政治資金規正法について、そう言い切るのは税理士で立正大法制研究所特別研究員(税法学)の浦野広明さん(84)だ。

政治資金パーティー裏金事件は結局、「裏金議員」の誰ひとり脱税に問われることもなく、安倍派と二階派の議員ら39人が党の処分を受けただけ。巨額の資金還流や収支報告書への不記載の実態解明は不十分で、事件の検証もなされないままだ。

「ザル法」の穴を埋めるはずの法改正も、審議は衆参両院合わせてわずか27時間足らずで、成立したのはさらに「抜け穴だらけ」の政治資金規正法。

「法律をつくってさらに裏金を認めさせるような、まったく実効性のない内容だと思います。裏金問題の原因究明も検証もせず、結局は臭いものに蓋をしたにすぎない。改正とは名ばかりで、悪政をさらに糊塗するような法律になっています」

裏金事件では、ほとんどの議員が「政治資金の管理については、秘書に任せきりの状況だった」と責任逃れの説明を繰り返し、立件を逃れた。

改正政治資金規正法は再発防止策として、議員への罰則を強化。議員に対して収支報告書の「確認書」の作成を義務づけ、議員がチェックを怠り会計責任者が不記載や虚偽記載などで処罰された場合は、議員も公民権停止となる仕組みを導入した。

「連帯責任を負わせるということで『確認書』の作成を義務づけたんでしょうけど、もともと会計責任者は単なる名義人。政治資金パーティーなど集会の主催者は政治団体を運営する議員であり、裏金収受者は議員個人なんです。

裏金事件は政治資金規正法違反にとどまらず、自民党の組織的な脱税事件といえます。脱税すれば当然、責任を問われるのは議員なわけです。

政治団体は一つの法人ですから、法人税が課されます。さらに、裏金は雑所得であり、所得税と消費税が課される。裏金事件で脱税した議員を所得税法違反、法人税法違反、消費税法違反で、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金に処することはできたはずです」

その裏金づくりの温床となった政治資金パーティーについては、改正法ではパーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げた。だが、個人や企業が政治団体に寄付した場合は公開基準の対象が「年5万円超」と年間合計額なのに対し、パーティーは1回ごとの購入額が対象。パーティーの回数にも購入人数にも制限はない。

「公開基準の金額を下げたところで、パーティーを複数回開催したり複数人で分担購入したりすれば、これまでと変わらず非公開でお金を集められるでしょうね」