【貴志祐介×角川歴彦 集中連載】冤罪とは何か?人質司法、人民裁判…まずは小説と映画の話をしよう

AI要約

小説家・貴志祐介氏の新刊『兎は薄氷に駆ける』が話題で、父の冤罪をすすぐため復讐を誓った男の行動が描かれる。

元KADOKAWA会長の角川歴彦が長期勾留された後、貴志氏との長年の親交を通じて本を読み、感想を交換した。

貴志祐介と角川歴彦の過去の作品や逸話を振り返りながら、30周年を迎える日本ホラー小説大賞について話し合う。

【貴志祐介×角川歴彦 集中連載】冤罪とは何か?人質司法、人民裁判…まずは小説と映画の話をしよう

小説家・貴志祐介氏の新刊『兎は薄氷に駆ける』(毎日新聞出版)が話題だ。父の冤罪をすすぐため、身命を賭して復讐を誓った男がとった行動とは? このリアルホラー小説を、万感の思いで読んだ人物がいる。角川歴彦──東京五輪をめぐる贈収賄事件で逮捕されたKADOKAWAの元会長である。7ヵ月以上にわたり長期勾留された角川氏は、貴志氏とも長年の親交がある。この小説を巡って、二人が縦横に語り合った。

角川歴彦貴志さんの新刊『兎(うさぎ)は薄氷に駆ける』を熟読していたら付箋だらけになり、あまりにも読みこみすぎたせいで本が壊れちゃいました(笑)。

貴志祐介感激です。ありがとうございます。

角川兄の春樹が日本ホラー小説大賞を創設したのが1994年のことで(※2019年、横溝正史ミステリ大賞と統合して「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」にリニューアル)、今年はちょうど30周年です。貴志さんが96年に受賞された『ISOLA』は、とてもおもしろい作品でした。今でもよく覚えています。

貴志あのときは佳作でした(改題版『十三番目の人格(ペルソナ)-ISOLA-』で作家デビュー)。前年(95年)に阪神・淡路大震災が起こり、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けたものです。「今はこれしか書けない」と思って阪神・淡路大震災を舞台にしたホラー小説を書いて応募したところ、佳作に選ばれました。

角川あれは佳作だったんですか。僕の中では今でも印象深い作品なので、てっきり大賞だと思っていました。

貴志ありがとうございます。翌年(1997年)に『黒い家』で日本ホラー小説大賞をいただきました。

角川たしか『黒い家』は100万部を超えましたよね。

貴志僕が出版した中では、一番よく売れた本です。

角川小説の舞台は京都でした。

貴志『黒い家』を映画化していただいたときは、舞台の設定が金沢に変わりました(1999年公開、森田芳光監督/製作総指揮は角川歴彦)。

角川能登半島地震で縄文遺跡が破壊されました。お見舞いの寄付をしようと思って、このあいだ能登に出かけてきたんですよ。能登から金沢に出て、金沢で宿泊したときに、映画『黒い家』のことを思い出しました。

貴志懐かしいです。あの映画が公開されてから四半世紀も時が経ったことが信じられないです。