水戸市民会館開館1年 想定上回る100万人来館 にぎわい波及課題

AI要約

水戸市民会館は開館から1年を迎え、想定を上回る来館者が訪れる好調な状況である。

市民会館は若者らによる勉強や歓談の場として利用が定着し、周辺の活性化も期待されているが、道半ばであることが課題となっている。

市民会館と周辺地域の連携を深めて、街中全体の盛り上げを図る取り組みが求められている。

水戸市民会館開館1年 想定上回る100万人来館 にぎわい波及課題

 水戸市民会館(水戸市泉町1)が、2023年7月の開館から1年を迎える。当初の想定を上回る来館者が訪れ、好調だ。一方で、開館により期待された中心市街地の活性化は道半ば。市民会館のにぎわいをどう周辺に波及させるかが課題になっている。【鈴木敬子】

 6月中旬の平日午後4時過ぎ。学校帰りの高校生たちが市民会館3階のミーティングラウンジに三々五々集まってきた。ここは飲食可能で、空腹を満たしながら友人と勉強に励む姿が見られた。

 級友2人と来ていた高3の女子生徒(18)は、週3日ほど利用する。「おやつを食べたり、友達に教えてもらったりしながら勉強できる。静かだけど、静か過ぎないのがいい」と話す。柱やはりが見える2階のラウンジギャラリーもほぼ満席。テスト前で友人2人と訪れた高3の男子生徒(17)は「木の感じが好き。家の次に安心できる場所」と言う。

 市民会館の来館者数は当初目標の年間60万人を超え、5月15日に100万人を突破した。若者らによる勉強や歓談の場として利用が定着。2000人収容のグロービスホール(大ホール)では有名アーティストのコンサートや各種総会などが開かれ、開館から3月末までの稼働率は目標の70%を上回る約95%となっている。

 また23年10月1~2日に市などが実施した歩行者通行量調査では、水戸駅南口から国道50号大工町交差点までの計12カ所で、全体的に通行量が増加した。中でも、日曜日だった1日の市民会館前の通行量は前年の約7・5倍だった。

 一方、市民会館に集ったり周辺を歩いたりする人が、近隣の飲食店を回遊する状況には至っていないようだ。

 市民会館から西に200メートルほどの泉町仲通り商店街。ここでスナック「粋族館」(同市泉町3)を営み商店会の顧問でもある忠文夫さん(66)は「市民会館ができて潤っているかと聞かれれば、飲食店に関してはゼロに等しい」と嘆く。大規模イベント終了後は市民会館向かいの京成百貨店か商店街と反対の水戸駅方面に人が流れ、商店街方面に来る少数も駐車場利用者だという。

 市は周辺飲食店の利用を促そうと、提示するとワンドリンクサービスなどの特典が受けられるグルメガイドを作成しているが、「ガイドを見て来たという客は一人もいない」。忠さんは、ライトで地面に絵を投影するなどして商店街への人の流れを作れないか、模索を続けている。

 「駅ビルや道の駅と同じことが市民会館でも起きているのでは」。そう指摘するのは、官民連携の「水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会」の三上靖彦事務局長(65)。同協議会は、国道50号の歩道に誰でも座れる椅子を仮設するなど、街中に憩いの空間をつくる社会実験を行っている。

 三上さんによると、駅ビルや道の駅が成功すると、人々はそこで満足して街中に出なくなり、結果的に街中が衰退することがあるという。若者の勉強の場だけでなく、調理室や音楽室などあらゆる機能を兼ね備えた市民会館は、街の需要を全て吸収しかねない。

 半面、市民会館の施設としての評判が良く、水戸全体の価値は高まっていると見る。今後はその評価を地域に広げていくことが大切という考え。市民会館で開かれるイベントに呼応した工夫で各商店が集客するなど「商店の人と市民会館が連携し、街中をどう盛り上げていくかが課題になる」と指摘する。