〈徴収始まった森林環境税〉林野庁の“悲願”でも使い方見えず、「無駄遣い」と言われないために必要なこと

AI要約

森林環境税についての背景や批判、制度の歴史について述べられた記事

森林環境税が低所得者に与える影響や税収の使途についての議論が示されている

林野庁が進めてきた森林環境税の創設過程や運動の歴史が詳しく説明されている

〈徴収始まった森林環境税〉林野庁の“悲願”でも使い方見えず、「無駄遣い」と言われないために必要なこと

 妻が、区役所から送られてきた地方税の税額決定・納税通知書を見て、「森林環境税って何なの」と不満そうに声をあげた。

 森林環境税は、森林整備を目的とした新税で、6月から徴収が始まった。1人当たり年間1000円が年に一度徴収される。徴収後は「森林環境譲与税」として各自治体へ配分される。

 妻は昨年1日3時間ぐらいのパートをやっていたから、わずかながらも地方税が課税される。その少ない課税額の中にある森林環境税は、たとえ1000円の少額とは言え目立つし、低額所得者には不満な新規課税である。

 日本は国土の3分の2が森林であるのに、めったに話題にならない森林・林業なのだが、こと増税となると、たとえ年間1000円であっても、世情は次のような批判で盛り上がった。

〇東日本大震災の復興特別税がなくなったところで、森林環境税にすり替えた。一度徴収が始まった税収を、政府は簡単に手放さない。財務省と政府は、まず「国民から巻き上げる」が最優先。使い道は後から考えればいいと思っている。

〇森林環境税として徴収されたお金は、国が市町村に森林環境譲与税という形で配分するのだが、森林面積の多寡だけでなく、人口規模も考慮して配るから、実は都市部にものすごいお金がいっている。東京とか大阪とか横浜とか、使い道がなくて、基金を作ってみんな貯金しているところもある。

 ごもっともな意見も多い。

 東日本大震災の復興特別税のような臨時的で緊急性を要するものなら目的税として適当であるが、森林環境保全のような経常的な施策のために目的税を充てることには違和感がある。無理筋だとは思うが、まあこの10年は何でもありだった。

 この森林環境税は、所管する林野庁にとっては悲願だった。そもそもの始まりは、横浜市が山梨県道志村に所有していた水源林の整備に充てる費用を水道料に上乗せして徴収していたのを参考にしたもので、林野庁は1986年に「水源税」を創設しようとした。

 このように市町村の先行事例を模倣して国の新規事業にすることはよくあった。しかし、増税感丸出しだったのが禍して実現しなかった。翌年には建設省(現国土交通省)と組んで森林・河川緊急整備税を要望したが、これも失敗に終わる。

 その後、91年に地方交付税の枠外に森林交付税の創設を目論見、市町村や市町村議会議員によって組織された促進連盟を結成し、実現運動が展開された。この手の運動は中央官庁の常套手段である。

 2003年には方針転換して全国森林環境・水源税、06年には縁起の悪い水源税の名を外し、全国森林環境税と名称を変えながら、与党、林野庁と一体となって創設を目指し、19年に至って森林環境税を創設することが決定した。

 その間33年の長きにわたる労苦が林野庁のホームページに誇らしげに掲げられている。税金なんて国民からすれば嫌悪の最たるものなのに、この態度は度し難い。いったいどっちを向いて仕事をしているのだろうか。

 森林環境税の仕組み等は、このホームページを見ていただければわかるので、ここでは詳しく語らない。