能登半島地震の不明者捜索を再開、二次災害懸念で4か月ぶり…弟を探す兄「今度こそ見つける」

AI要約

石川県輪島市市ノ瀬町での能登半島地震による土砂崩れで行方不明者の捜索が再開された。

一人で暮らす英次さんの家が土砂で埋まり、兄の垣地さんが捜索を見守る日々。

地震で石川県内で3人が行方不明となり、他の地区でも捜索が予定されている。

 能登半島地震による土砂崩れで民家が巻き込まれた石川県輪島市市ノ瀬町で、県警は24日、約4か月ぶりに行方不明者の捜索を再開した。二次災害の危険があり3月上旬から中断していたが、安全対策工事を終えた。「今度こそ見つけてやるからな」。金沢市の会社員垣地(かきち)弘明さん(59)は、弟・英次(ひでつぐ)さん(56)との「再会」を願い、捜索を見守った。

(丸山菜々子、浦上華穂)

 土砂や流木がうずたかく残る市ノ瀬町の集落でこの日、県警機動隊員や建設作業員らが重機を使い、約40人態勢で手がかりを探した。

 元日の地震で、英次さんが一人で暮らす家は背丈を超える高さの土砂で埋まり、2階部分が100メートル近く流された。垣地さんは近くの避難所に身を寄せ、毎日捜索を見守った。英次さんが消防団の活動で着用した服やヘルメット、アルバム。捜索中断までに土砂の中から様々な物が見つかったが、英次さんは発見されていない。

 英次さんは、一人暮らしの母親を心配し、30歳の頃、会社員を辞めて実家に戻った。瓦ぶき職人として働きながら昨年秋に母親が亡くなるまで世話をした。

 「本来は長男の役目なのに、文句一つ言わず引き受けてくれた。全部背負わせてしまったな」。あの日も自分の代わりに土砂にのまれたんじゃないかと思うと、垣地さんは胸が苦しくなる。

 英次さんと母親が大切にしていた畑に4月、カボチャやジャガイモなどを植えた。「英次の苦労を感じたい」と慣れない農作業をしながら待ち続けた捜索再開。垣地さんは「一筋の光が見えた」としながらも「あの日から何も変わっていない」と話し、こう続けた。「早く出てこいよ、英次」

 地震により石川県では輪島市の3地区で3人が行方不明となっている。県警は他の2地区でも安全対策が完了し次第、捜索を再開する方針。

 最大震度7を観測した能登半島地震では、現行の耐震基準に基づく建物は無被害が7割近くで、全壊と半壊を合わせても1割未満であることがわかった。被害は古い耐震基準の建物に集中していた。調査した日本建築学会北陸支部が25日、暫定報告として公表する。