日本の中華とは一味違う?カナダで出会った米国“風”中華は「残り物」から生み出された驚きの料理だった!

AI要約

中華料理店が世界中にどのように広がったか、その歴史や背景を探る旅。北米やアフリカ、北極圏などさまざまな地域に中国人経営の中華料理店が存在する様子が描かれる。

地元の人々に愛されるカフェが登場し、中華料理の要素を取り入れた独自のメニューを提供している様子が描かれる。

中華料理の起源や偽造料理について、さまざまな視点から探る。カリフォルニアに移住した中国人労働者が作り出したチャプスイの歴史や特徴が紹介される。

日本の中華とは一味違う?カナダで出会った米国“風”中華は「残り物」から生み出された驚きの料理だった!

 北米中華、キューバ中華、アルゼンチン中華、そして日本の町中華の味は? 北極圏にある人口8万人にも満たないノルウェーの小さな町、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国・マダガスカル、インド洋の小国・モーリシャス……。 世界の果てまで行っても、中国人経営の中華料理店はある。彼らはいつ、どのようにして、その地にたどりつき、なぜ、どのような思いで中華料理店を開いたのか? 

一国一城の主や料理人、家族、地元の華人コミュニティの姿を丹念にあぶり出した関卓中(著)・斎藤栄一郎(訳)の

『地球上の中華料理店をめぐる冒険』。食を足がかりに、離散中国人の歴史的背景や状況、アイデンティティへの意識を浮き彫りにする話題作から、内容を抜粋して紹介する。 『地球上の中華料理店をめぐる冒険』連載第8回

 『農家から騎馬警察隊まで! あらゆる人々が訪れる中国式カフェ…よそ者の華人の作った店がいつしか地元の人々の憩いの場へ』より続く

 プレーリーにあるカフェは、正確には中華料理店ではない。実際、提供されるメニューは、中華料理とは似ても似つかない。朝ならおいしいコーヒーとベーコンエッグ、ランチは分厚いポークチョップにマッシュポテトのグレイビーソース(訳注:肉汁で作るソース)添え、夜はディナー後に訪れる客向けのコーヒーやデザートといった具合だ。

 「おまけにコーヒーは1ドルでおかわり自由。食べ物もマクドナルドよりおいしいし」とジョン。

 どんなメニューがあるのかジムに聞いてみた。

 「カナダ風……の中華かな。正確に言えば中華ではないね。米国風中華料理といえばいいのかな。炸蛋巻(訳注:米国の中華料理店でお馴染みのキャベツや豚肉を具にした揚げ春巻き風料理)、炒麺(中華焼きそば)、チャプスイ(訳注:八宝菜に似た料理)とかね。本場の中華とは違うね、そうでしょ」

 確かに、チャプスイは米国生まれの中華だ。ジェニファー8・リーは著書『The Fortune Cookie Chronicles』の中で、チャプスイは異文化を利用した料理界最大のジョークと指摘している。実はチャプスイは広東語で雑砕と書き、「寄せ集め」「ごった煮」といった意味になる。要するに、残り物なら何でもいいわけである。基本的には、肉・野菜を醤油と胡麻油で炒め、コーンスターチでとろみをつけた料理である。もやしも安価なので材料としてよく使われる。

 この料理の起源を巡っては、さまざまな説がある。だが、一般的には、20世紀初頭に中国からカリフォルニアに移り住んだ移民が生み出したのではないかと言われている。その多くは、職を失った鉄道労働者だったらしい。この料理の巧妙なところは、どんな材料でも作れてしまう点だ。

 余った材料を上手に生かしているのは、初期に入ってきた中国人労働者だけではない。高級シェフも例外ではないのだ。中華・フレンチの高級フュージョン料理で長年、トロントのレストラン業界を席巻してきたカリスマシェフ、ススール・リーの朝のメニューミーティングを取材させてもらったことがある。彼がスタッフに最初に尋ねた質問が「今、冷蔵庫とパントリー(食品庫)に何が残っている?」だった。

 『カナダの歴史から抹殺された「中国人労働者」の存在…現代の華人のルーツとなった「白人至上主義」の被害者たち』へ続く